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ブロックチェーン証明書(Blockcerts準拠)と Open Badgesの違い

今回は、ブロックチェーン証明書(Blockcertsに準拠)と Open Badgesの違いについてまとめました。 Open Badges とは Open Badgesは、2011年に、特定のスキルの達成度をデジタルおよび視覚的に伝えるために誕生したデジタルバッジ規格です。Open Badgesが開発したデジタルバッジは、デジタル画像とホストされたデータセットを通じて単一の成果を伝えられるように設計されています。最初はMozilla Foundationが主導していたOpen Badges規格が、IMS Global Learning Consortiumによって維持されたことで、プラットフォーム間の相互運用性が確保されています。 このデジタルバッジは、成果の達成が細分化され、より大きな教育的または専門的な目標への新しい道を拓くことを目的としています。 近年、eラーニングやMOOCsなど、携帯やPCで国内外や組織を問わず自由に学ぶ環境が整備されてきています。加えて、時代の変化の速さや労働寿命が伸びることが予想されている今後において、デジタルバッジは細分化されたカリキュラムに応じた資格や修了証をあらゆる場面で共有することを可能にします。 open badgesのデジタルバッジとマイクロクレデンシャル このように、デジタルバッジは小規模なクレデンシャル、つまり「マイクロクレデンシャル」に最適です。マイクロクレデンシャルとは、高いレベルの検証が必要な状況(国境でのパスポートの検証など)には不十分ですが、個人の達成のマイルストーンにおいて効果的に報酬を与えることができ、他の達成と組み合わせることで、最終的に大規模で高額な資格の取得において重要な要素になるとされています。 デジタルマイクロクレデンシャル化により、すべての資格情報などがデジタル化されることを、多くの教育プロバイダーや雇用主が期待していました。しかしながら、デジタルバッジのセキュリティ制限により、適切な使用例の範囲は制限されています。 たとえば、バッジデータとバッジ表示は別々にホストされるため、表示が簡単に改ざんされる可能性があります。加えて受信者は自分のバッジに接続された暗号化キーを制御できない仕組みになっており、実際には技術的な所有権はありません。 このように、Open Badgesによって提供されるセキュリティレベルは、限定的な場面では適しています。そのため、マイクロクレデンシャルは、より大きな成果や学習者のキャリアパスなどの道に沿った、小さなステップを証明してくれるものとして使い分けがされています。 ブロックチェーン証明書とは Blockcertsは、MIT Media Labによるプロジェクトの一環として2015年に開発が始まりました。Blockcertsについてはこちら。 OpenBadgesとの主な違いは、デジタル記録の検証のためのグローバルな公証人として、「ブロックチェーン」の力を活用することでした。 2016年に正式にリリースされたすべてのリファレンスライブラリはMITオープンソースライセンスの下で公開されたため、Blockcertの発行・受信・および検証用の独自のアプリケーションを構築したい人は、コードを自由に使用できます。弊社もBlockcertsに準拠した証明書サービス「CloudCerts」を提供しています。 そして、上述のオープンソースライブラリには、世界中のあらゆる機関が発行したすべてのBlockcertを検証するUniversal Verifierが含まれています。加えて、Blockcertsの公式ホームページにもUniversal Verifierがあり、誰でも使用できます。つまり、Blockcertsにより発行された証明書は世界中の誰でも検証することができるのです。 つまり、Blockcertsに準拠したブロックチェーン証明書は、 改ざん不可能 発行者と受信者の所有権 柔軟なフォームファクタ 検証付きのオンラインおよびオフライン共有 独立した検証 を提供しており、バッジとは根本的に異なるものです。 Open Badges と ブロックチェーン証明書の比較 *Open Badges 2.0標準に準拠している場合、ベンダーに依存しない方法で検証可 OpenBadgesは、個人の達成のマイルストーンに効果的に報酬を与えるため、認定資格などのマイクロクレデンシャルを、LinkedinなどのSNSで共有するなどの活用例があります。 一方で、Blockcertsは高いセキュリティレベルでの検証が可能であることから、MITなどの大学で卒業証明書として発行されるといった事例があります。

スタディログ・ライフログのデジタルトランスフォーメーション「出口戦略」まとめ

今回は、「ラーニングエコノミー」の概念を基にして行われているプロジェクトの一つ、「C-Lab」について、具体的な学習者の「出口戦略」と現時点で議論されている課題をまとめました。 「C-Lab」の概要についてはこちら。   学習者への「出口戦略」     「C-Lab」概要でも触れましたが、「C-Lab」及び「ラーニングエコノミー」が目指している目標がSDGs(持続可能な開発目標)、中でも「質の高い教育をみんなに」と「すべての人間らしい仕事の提供」です。 これらの目標に基づき、実現可能な学習者へのサービスとして、下記のような具体例が挙げられています。   ・改ざん不可能な資格・卒業証明書の提供 ・ユーザーの「学び」の無償化、価値の可視化(アクティブラーニング化) ・コミュニティやボランティア活動参加の促進 ・タイムリーなキャリアアドバイス、及びジョブマッチング ・信用の透明化による融資条件緩和、起業の簡素化、促進   更に、OECDが提唱する「21世紀型スキル」に則り、コミュニケーションスキルやビジネススキルといったソフトスキルを養う場の提供、価値の可視化にも取り組んでいます。     この取り組みは、欧州や北米での難民・移民問題に対して、再定住に不可欠な言語や就労のためのスキルを学ぶ機会を提供するとされています。 つまり学習者は、学生や労働者だけでなく、本来生活のための最低限の教育を必要とする難民にまで幅広く想定されているのです。 学習者に提供できるサービスの精度は、人工知能の精度、つまりデータ量に依存するため、幅広い学習者・過去のデータを大量に保有する世界中の様々な企業がデータ提供をすることで、学習者にとって非常にメリットの大きいプロジェクトになります。   「C-Lab」の課題     参加者を募る際の障壁として「経済的合理性」が挙げられています。 つまり、学習者の「学びのデータ」に対しての価値が、出資をする企業や団体に対して十分に明らかではないということです。 この問題を解決するために、以下の取り組みが行われています。   ・多様な評価軸を実現するためのアルゴリズムの透明化 ・コンテンツの透明化、標準化   例えば、人の信用によってスコアを測る「胡麻信用」は既に中国で実装されているものの、具体的なアルゴリズムが公表されておらず透明性に欠けています。 ユーザーにアクティブラーニングを促すためには、ラーニングエコノミーによって可視化したユーザーの学びの価値に根拠を与える必要があるとされています。 また、コンソーシアムに参加している教育機関のコンテンツ、ユーザーの成績や成果についても、透明化させる必要があるとされています。 つまり、出資している企業に対して、採用した人材のスキル不足などによるミスマッチを極限まで防ぐような、高い精度を提供可能であるということを証明しなくてはならなりません。   「C-Lab」は教育格差の是正になるか   上記の課題以外に、教育格差問題の根本の是正にはならないという意見があります。 具体的には、習得が難しいスキルに価値が集中してしまうのではないか、大量の時間と家庭の環境に依存してしまうのではないか、といった懸念も挙げられています。 現時点でも議論されている問題ですが、SDGsの持続可能な開発目標を掲げ、国際的に参加者を募っていくことを考えると、利害関係者すべてを納得させるためのさらなるシステムの開発が必要です。 参考 OECD Global Blockchain Policy Forum 2020 Engineering the Benefits of Learning in the New Learning Economy

C-Labプロジェクト参加団体リストと各団体の役割まとめ

  今回は、「ラーニングエコノミー」の概念を基にして行われているプロジェクトの一つ、「C-Lab」について、具体的な参加団体や企業とその役割をまとめました。 「C-Lab」の概要についてはこちら。   「C-Lab」には、既に上記のような企業が参加を表明しており、教育を中心に様々な領域に応用することが想定されています。   「Identity Systems」     このプロジェクトにおける「土台」と位置付けられているのが「Identity Systems」です。 「Identity Systems」では、人や組織のための独立したアイデンティティ「Self-Sovereign Identity(SSI)」の実現を前提としています。「C-Lab」プロジェクトは今後様々な業界や地域からの参加が想定されるため、「透明性が高く、所有者が真にそのデータを手にする、もしくは提供するIDといえるものでなくてはならない。」とされているからです。 そのため、デジタルIDのコードはオープンソースで、ネットワークは分散型で台帳技術を利用して運用される「Sovrin」、そしてその技術を業界横断的に展開している「IBM」や「Microsoft」が開発に携わっています。   「Badging and Credential Systems」     「Badging and Credential Systems」では、改ざん不可能な資格情報や卒業証明書、研究機関の達成度などの証明・検証を可能にするための開発を行います。 ここでは、verifiable credentialsに準拠し、ブロックチェーン技術を基にしたオープンソース「blockcerts」や、複数の教育機関にまたがった質の高いリソースを提供するOpenPathways標準に取り組む「IMS Global」などが参加しています。   「Research Information Systems」     「Research Information Systems」では、学術論文や最先端の研究リソースをユーザーに提供することを目的としています。 各ユーザーへのコンテンツの提供のみならず、「Badging and Credential Systems」と連携し、OpenBadgeによる研究内容の透明性の確保や、ユーザーへのインセンティブの設計まで幅広く行います。 学術情報メディア「arXiv」や、Googleの研究開発部門である「Google X」がプラットフォーマー、またはリサーチに協力し、開発を行っています。   「Library and Metadata Systems」     「Library and Metadata Systems」では、「Research Information Systems」と同様に、公共図書館や学術図書館のリソースや様々なコミュニティなどを提供することを目的としています。 その他にも、参加者が使いやすいように、ユーザーの様々なデータを標準化する役割も担っています。 オープンで分散型のデータエコシステムを作成し、教育やスキル等のデータの標準化を進めている「T3 innovation network」や、世界中の教育機関の図書館や美術館のリソースをクラウドベースで提供している「OCLC」が参加しています。   「Learning Management Systems」     「Learning Management Systems」は、ユーザーに学びのコミュニティやコンテンツを提供するシステムを提供します。 ユーザーは様々なプラットフォームをシームレスに選定することができ、学びたいコンテンツによって使い分けることができます。 プラットフォームに参加している企業は、ユーザーから得た学習データのログや成果物などのデータをブロックチェーン上に適切に管理し、改ざんや情報漏洩を防いでいます。 また、「Research Information Systems」と連携し、学習成果や成果物、資格証明の価値を可視化する役割もあります。 世界の大学教育機関で最もプラットフォームとしてのシェアが高く、google docsやMicrosoft officeなどの異なったシステム仕様にも優位性がある「Canvas」や、世界最大級のオンラインコンテンツプラットフォームである「edX」が参加しています。   その他採用やソフトスキルを養う機会を提供   その他にも、市場とユーザーの能力の正確な連動を目的として、総合求人サイト「Glassdoor」や「Linkedin」がリソースの提供を発表しています。 また、多角的な視点やアクティブラーニング、対人コミュニケーションスキルを養える場も提供するため、「SAP」や「Salesforce」等の企業がプロジェクトへの参加を表明しています。    

平等な教育を実現する「ラーニングエコノミー」とは?学びの実績を分散技術で新たな価値に変換するプロジェクト「C-Lab」が発足

今回は、2018年に国連で提唱された「ラーニングエコノミー」の概念を基にして行われているプロジェクトの一つ、「C-Lab」についてまとめました。 ラーニングエコノミーとは ラーニングエコノミーとは、従来型の教育システムが抱える様々な問題を解決するために、国連が提唱した概念の一つです。 これはSDGs(持続可能な開発目標)の一つ、「質の高い教育をみんなに」を達成することを目的としています。 従来の教育は「報酬は教員に支払われ、その教員から教育が提供される」という仕組みのため、「教育格差」が生まれやすい性質を持っていました。 ですが、アメリカやヨーロッパ各国の教育機関では、「質の高い授業を誰もが受けられる」ように、教育の無償提供をする動きが非常に活発になってきています。 こういった様々な無償コンテンツの提供と引き換えに、ユーザーの学びとキャリアに関するデータを、政府や企業が収集するという新しい構想が「ラーニングエコノミー」です。 C-Labとは この「ラーニングエコノミー」の構想を受け、アメリカ・コロラド政府の主導のもとに発足したのが「C-Lab」です。 コロラド州は、高校卒業後の大学進学率がアメリカ各州に比べて低いという問題を抱えており、その解決を図るために始まったのがこの「C-Lab 」でした。 これまでの実績やスキルを証明する学校の卒業証明や職歴だけでなく、UdemyやCoursera、MOOCといった教育プラットフォームのオンラインコースの修了証や、ワークショップ参加記録まで、全てのユーザーの教育に関するデータを「ブロックチェーン技術」を用いて管理します。 この仕組みは、分散型アイデンティティ(DID)の概念に則っており、ユーザーだけが自身のすべての記録を閲覧することができ、共有先をコントロールすることができます。 更に「アクティブラーニング」の推進にも非常に適しています。 アクティブラーニングとは、自ら能動的に学びに向かうよう設計された教授・学習法です。C-Labではホスピタリティやクリティカルシンキングといった能力を身に付け、興味を持った分野を幅広く学ぶことができ、グループディスカッションや共同作業など複数人で協力し合うカリキュラムが行われています。 さらに蓄積されたデータは、「人工知能」によって分析可能であり、ブロックチェーン技術によって蓄積されたデータと掛け合わせることで、ユーザーに適したタイムリーなキャリアアドバイスを受けることができます。 また、教育機関や企業側も、ブロックチェーン技術のトークンエコノミーを利用することで、市場に適した人材への投資が可能となり、移り変わりの激しい時代に適応する人材を育てることができます。 C-Lab及びラーニングエコノミーの将来性 「C-Lab」は、名だたる企業や団体がプロジェクトの推進者として名を挙げ、開発に携わっています。 その他にも「Hyperledger」を提供する「The Linux foundation」や、コロラド州各大学も提携を発表しています。 ラーニングエコノミーの推進拠点である、アメリカ・NPOからは「SDGsのもう一つの目標である「すべての人間らしい仕事の提供」を達成しうるものである。」とされており、キャリアアドバイスの精度や多様性に欠かせないデータ、つまり「参加者」を積極的に募っています。発足時の資料はこちら。 2020年7月時点でも、大規模な実証実験や開発が進んでおり、今後様々な分野に応用されていくことが予想されています。 当社も国内唯一のデジタルクレデンシャル専業のスタートアップとして今後もブロックチェーン証明書の普及を目指すとともに、クレデンシャルを「ソーシャルアセット」としてデザインし、学習者と社会に新たな価値を提供できるよう、コア技術の開発に取り組んでまいります。 参考 C-Lab AMP DIGITAL TRANSFORMATION OF UNIVERSITY EDUCATION IN UKRAINE: TRAJECTORIES OF DEVELOPMENT IN THE CONDITIONS OF NEW TECHNOLOGICAL AND ECONOMIC ORDER (DOI:https://doi.org/10.33407/itlt.v64i2.2083) Cloud platform of the modern Ukrainian university as the prerequisite of transition to the innovative model of economic development. Information Technologies and Learning Tools

スタディログ・ライフログの集積は、ユーザの信頼情報たりえるか。分散型クレデンシャルの「キャズム」問題

今回は、分散型クレデンシャルの課題として挙げられる「ログのデータ集積がユーザーへの信用に繋がるか」、「C-Lab」プロジェクトの具体的なスケジュール・予算についてまとめました。 C-Labの今後のスケジュールと予算 分散型クレデンシャルの「キャズム」問題に触れる前に、アメリカの先行事例「C-Lab」の進捗状況と今後のスケジュールについてまとめます。 「C-Lab」は、2020年1月に行われたプロジェクトのキックオフミーティングで具体的な予算とスケジュールを発表しました。 2020年7月時点ではフェーズ2に移っており、既にコロラド州の3つの高等学校と3企業を対象とした実証実験が始まっています。 フェーズが進むにつれて、参加企業や学習者の規模が大きくなり、機械学習によるデータ運用が行われ、学びのアドバイスやキャリアアドバイスを受けることができます。 参加団体や企業については前回記事でまとめましたが、フェーズ4の段階で100以上の教育機関や企業が実証実験の対象となります。 2023年にコロラド州での実証実験を終えた後、国連主導の下「21世紀の新しい教育プラットフォーム」として様々な国や地域への定着を図り、2030年のSDGs目標達成を目指しています。 「C-Lab」発足当時の予算は3年間で約8.5億円とされていましたが、発足直後に非営利団体の更なる支援により、約12億円に引き上げられています。 現在も予算を上回る支援金による援助を受けており、計画の前倒しや更なるプロジェクトの拡大も考えられています。 ログのデータ集積がユーザーの信用に繋がるか 分散型クレデンシャルのエコシステムである「C-Lab」プロジェクトがなぜここまでの速さで展開しているか、疑問に思うかもしれません。 そこで日本でもよく取り上げられる「ユーザーの学習履歴やボランティア等のデータ集積で、ユーザー自身の信頼度を測れるか」という議題について、「C-Lab」のプロジェクトキックオフ前の議論の内容から紐解いてみます。 この議題に関して主に2つの観点から議論が行われました。 ・アルゴリズムのバイアス問題 ・企業に向けたユーザーの信用の測定 アルゴリズムバイアス問題 まず、アルゴリズムのバイアスに関してですが、「C-Lab」では国連主導の下に行われている実証実験ということもあり、ユーザーの評価軸は透明かつ具体的である必要があります。 例えば、既存の信用スコアサービスを提供する企業のアルゴリズムにはバイアスが存在していることが指摘されています。具体的には、登録情報の性別を変更するだけで点数の上下があったことが指摘されており、提供側が修正するという事例が多くあります。 世界的に見ても、アルゴリズムバイアスが存在すると指摘される金融サービスは非常に多いため、スタディログの集積及びユーザーの「学び」を資産化する際には、アルゴリズムがフェアであることに重点が置かれています。 具体的には、EUのGDPR(一般データ保護規則)22条「データ主体に対して法的効果(または同様の重大な影響)を及ぼす場合の、完全な機械化、自動化されたプロファイリングのみによる決定の禁止」や、アメリカで制定されたECOA(信用機会均等法)「性別、年齢や既婚・未婚といった婚姻状況、人種や肌の色、宗教、出身国といった社会的帰属によるいかなる差別の禁止」に準じた形で開発を進めています。 ユーザーの信用の測定 次に企業に向けたユーザーの信用の測定についてです。より良い教育インフラシステムを成立させるためには、出資者である参加企業の採用コストを減らし、適切な人材とのマッチングを可能にすることが必要です。 その為には、出資して得たユーザーのデータが、既存の仕組みから得たデータよりも信用足りうることを保証しなくてはなりません。 しかしながらこの問題は、先駆けてオープンプロジェクトとして取り組んでいる「T3 innovation Network」が既に効果測定済みであったことから解消されつつあります。 既存の採用の仕組みでは、スキルと経験の価値は伝える人の能力に依存していました。しかし、「T3 innovation Network」はAIやブロックチェーンを駆使し、400以上の企業や教育機関のデータをあらゆる業界の雇用主が理解できるように提供しています。これにより、参加企業の大幅な採用コストカット・ミスマッチの減少にも成功しており、さらに米国各州政府が官民標準協働(SC)に積極的に関与していったことで大規模なプロジェクトに発展しました。 「T3 innovation Network」が「C-Lab」に参加し、SSI規格とテクノロジーの技術的な詳細を提供することで、データへの信用性の担保は確実になったといえます。(2020年6月公開のホワイトペーパーより) 参考 C-Lab aims to restructure higher ed using blockchain tech The T3 Innovation Network

IPFSとは?

  「Web3.0」において、Dappsやその他のブロックチェーンサービスの推進を後押しする技術として「IPFS」(Inter Planetary File System)が注目を集めています。 今回は、そのIPFSの仕組みや最新の動向をまとめました。   IPFSについて   Filecoinが提供している分散型ストレージサービスです。 IPFSは「ブロックチェーン」ではなく、シンプルにノードとノード間のデータを移動する「プロトコル」です。 もともとは2014年に創業した、「Protocol Labs」という研究開発企業によって開発され、提唱されました。 同社が開発した仕組みの一つに「IPFS」があり、これに基づいたプロジェクトが「Filecoin」です。 *「Filecoin」と「IPFS」が混同されている記事も散見されますが、概念が少し異なります。 「Filecoin」というプロジェクトは、2017年に約300億円の資金調達に成功しており、暗号技術の歴史上でもかなり大きなプロジェクトであるといえます。   HTTP vs IPFS     上記、左がHTTP(Hypertext Transfer Protocol)、右がIPFSによる通信の大まかな仕組みです。 HTTPは、現在私たちが通信する際の主要なプロトコルとして用いられています。 HTTPの場合、webページやクラウドサービスを利用するには企業が持つサーバーにアクセスする必要があります。 この場合、管理者である企業が膨大なサーバーを保持することでサービスを成り立たせているので、HTTPを用いたシステムは「中央集権的」であると言えます。 一方、IPFSではこの「管理者」が存在せず、ネットワーク上の参加者が直接コンテンツを管理するpeer to peer通信を採用しています。 この仕組みは分散的かつ「非中央集権的」なシステムです。   アドレス vs コンテンツ   例として、音楽ストリーミングサービスを挙げます。 現在、「Apple Music」「Spotify」「Amazon Music」など、企業ごとにコンテンツが提供されており、多数の選択肢がユーザーに示されています。 これは、たとえ同じ楽曲(コンテンツ)でも各企業の持つサーバーが異なっていることが原因です。 このように、管理者のサーバーによってコンテンツが指定される既存の仕組みは、「アドレス型」(ロケーション型とも呼ばれる)といいます。 一方、IPFSを用いた場合、「管理者」が存在しなくなることでプラットフォームへの依存が解消され、楽曲自体の値段で取引されるようになります。 このように、「コンテンツ」自体によって値段が決まっており、サーバーの位置に依存しない仕組みを「コンテンツ」型であるといいます。   HTTPの問題点   現在私たちが使用している、HTTPには次のような問題点があります。 1点目は、セキュリティの脆弱性についてです。既存の仕組みでは、 ・アクセスに関するすべてのコントロール権が管理者に集中してしまう・企業内の開発者がそれぞれ別の国で開発を進めたい場合にも中央のレポジトリで管理する必要があり、業務に支障をきたす・管理者がアクセスを自由に制限出来たり、情報を自由に改ざんできる といった問題があります。 2点目は、サーバーの負荷についてです。 従来の通信方法は、管理者である企業が常にサーバーを安定稼働させなければならず、アクセスの数が増えた場合でも、遅延なく応答するためのインフラを準備しないといけません。 そして、IPFSはこれらの弱点を補完する、画期的な技術とされています。   IPFSの将来性     IPFSは、既存の中央集権型サービスへの参入障壁を取り払う「分散型エコシステム」として、様々な企業が活用し始めています。   更に日々改良が進んでおり、現時点で最新の「IPFS 0.5.0」は、世界中の開発者が開発環境を共有できる「コンテナイメージ」を効率的に使用できる技術とされています。 実例として、Netflixは「IPFS 0.5.0」を活用し、独自のコンテナ管理プラットフォームである「Titus」の改良させることで、コンテナ配布の高速化に成功しています。 Netflixと同様に、IPFSネットワーク上でストレージを構築しようとするプロジェクトは年々増加しており、誰でも参加出来るストレージ市場が今後構築されていくことが予想されます。 参考 Mundo Descentralizado: Introducción a IPFS Why The Internet Needs IPFS Before It’s Too Late Decentralized document version control using ethereum blockchain and IPFS  

Verifiable Credentials発行プラットフォームまとめ【2020年版】

  今回は、W3Cが提唱しているVerifiable Credentialsに則ったプラットフォームを紹介します。 W3C、及びVerifiable Credentialsについては過去の記事にまとめています。こちら → https://lastrust.io/2020/05/25/whatisverifiable-credentials/ また、今回はW3Cの標準仕様に則っていると確認が取れる事例のみに絞ってご紹介させていただきます。 ・W3Cの標準仕様はこちらVerifiable Credentials Data Model 1.0Decentralized Identifiers (DIDs) v1.0 Verifiable Credential Platform 今回紹介するプラットフォームは以下になります。 ・ERC-725、ERC-735 ・Hyperledger Indy ・Microsoft Build 2020 ERC-725、ERC-735 ERC(Ethereum Improvement Proposals)ですが、Ethereumブロックチェーンのセカンドレイヤーにあたるサービスのうち、クレデンシャル(アイデンティティ情報)に用いられています。 その中で現状、最も注目されているIdentity規格と言えるのがこのERC725です。 ERC-725は、ERC-20トークンの標準化やweb3.js提唱者の一人として知られ、エンジニアでもあるFabian Vogelsteller氏が2017年に提案しました。 EIPs(Ethereum Improvement Proposals)はオープンなドキュメントを持っており、誰でも改善を提案することができます。もともとの課題である、プライバシー保護、取引の速さについての議論はかなり活発になっています。(イーサリアム3.0とも呼ばれているようです。) 同様の例としてBitcoinのコミュニティ、BIP(Bitcoin Improvement Proposals)が挙げられます。 イーサリアムプラットフォームは、分散アプリケーションを記述する言語の1つである『Solidity』のインターフェースを定義していることが特徴で、 この仕様に基づき、Ethereumブロックチェーン上でクレデンシャルを流通させる仕組みを提供します。 詳細はここでは割愛しますが、 ERC725がIDのインターフェイスを取り扱い(スマートコントラクトをデプロイ)、ERC735がクレデンシャルの構造や取り扱いを定義するという点で役割が異なります。 ERC-735は直接DIDとして利用せず、W3CのDID形式でEthereumアドレスを包み込む(wrapping)して記載する方法も提案されています。非常にシンプルであるが故、プライバシー保護が今後の課題といえます。 イーサリアム上での議論や提案の詳しい内容は、バージョンのアップデートも含めた内容をまとめて公開します。 Origin Protocolとは?   「Origin Protocol」はERCの代表的なプロジェクトです。日本でもBlockBase社が提携し、ERC-725の開発及びシェアリングエコノミーへの利用を目指しています。 主にAirbnbやUBERのようなシェアリングエコノミーで利用が検討されています。特徴として、アカウントに電話番号・Eメール・Airbnb・Facebook・Twitter・Googleといった複数のアカウントを紐づけることができ、実在する人物かどうかの証明だけでなく、紐付けアカウントの活動履歴から個人の信用が可視化されるプラットフォームとなっています。 Hyperledger Indy Hyperledger Indyとは、分散型ID(DID)の提供を想定して開発されたパーミッション制(チェーンへのアクセスに許可が必要)のブロックチェーンです。The Linux Foundationが主催しており、Hyperledger Fabricなどの様々なプラットフォームを提供しています。 Hyperledger Indyによって提供されるツールやライブラリ(Indy-SDK)を用いることで、業界などに限定されない、相互運用可能な分散型身分証明を開発することができます。現在、相互運用性の実験を行うプロジェクト(Project Aries)が存在しています。 運転免許証やパスポート、保険証などに活用することで、グローバルアイデンティティを実現できるプラットフォームとして注目を浴びています。 下記のリンクにて、IBMがデモを公開しています。 https://www.youtube.com/watch?v=cz-6BldajiA&feature=youtu.be Hyperledger の相互運用性についてですが、プロジェクトが同時並行で動くためにプロジェクト単位で成熟度が異なること・プロトコルがLedgerと密接に紐づいていること、といった課題への解決策が期待されています。 フィンランドのプロジェクト「Project Mercury」とは  フィンランドでは、国内のさらなる経済発展や国際化に向けた取り組みの一環として、 Project Mercuryというプロジェクトを開始しています。 このプロジェクトは、海外の起業家に「起業しやすい環境を提供する」という目的のもと、金融機関や税務署、法務局などが起業手続きの簡素化、デジタル化を推進するべく2018年5月にスタートしました。 このプロジェクトの構築にはHyperledger Indyが活用されています。企業に対しアイデンティティを付与し、企業プロセスをすべてデジタル化及び分散化させることで、会社情報が保証され、いつでも共有できる仕組みです。 Microsoft Build 2020 Microsoftは、2018年にDIDに関する自社のホワイトペーパーを公開して以来、DIDの開発に積極的に携わってきた経緯があります。 実証例こそありませんが、Windowsのエンタープライズ向けのシェアを考えると、かなり注目度の高い取り組みといえます。 今回取り上げるのは、2020年5月に発表された、Azureを用いた分散型の学生証アプリ(Student ID)です。 HPでは、上記の大学「Contoso University」の学生の証明プロセスを紹介しています。 ・大学側が発行したVerifiable Credentialsをユーザーが登録する・書店などで学割を使いたい場合は、証明書(学生証)を提示する・スマホには別の証明書も登録できるといった使い方があります。 アプリは Microsoftが開発・提供している「Microsoft Authenticator」が採用されています。 証明書の検証には、ブロックチェーン技術を用いた分散型の公開鍵基盤(Decentralized Public Key Infrastructure)の仕組みを利用しており、登録された公開鍵を照合します。この仕組みは 「W3C」(World Wide Web Consortium)の策定した標準に基づいて開発されています。 なお、ホームページにはデモが公開されています。 このDIDシステムはBitcoinのセカンドレイヤーでの実装であり、Microsoft社が開発したION(Identity Overlay Network)はソースコードも公開されています。ソースコードはこちら→ https://github.com/decentralized-identity/ion/ 結論 上記のプラットフォームは非常に新しく、改良速度がとても速いです。どのOSSのプロジェクトを使うかは、最新の仕様を確認して考える必要があります。 信用度の高い学術的な情報としては、2018年のPeer review論文「 Blockchain and the Future of … Read More