「Web3.0」において、Dappsやその他のブロックチェーンサービスの推進を後押しする技術として「IPFS」(Inter Planetary File System)が注目を集めています。
今回は、そのIPFSの仕組みや最新の動向をまとめました。
IPFSについて
Filecoinが提供している分散型ストレージサービスです。
IPFSは「ブロックチェーン」ではなく、シンプルにノードとノード間のデータを移動する「プロトコル」です。
もともとは2014年に創業した、「Protocol Labs」という研究開発企業によって開発され、提唱されました。
同社が開発した仕組みの一つに「IPFS」があり、これに基づいたプロジェクトが「Filecoin」です。
*「Filecoin」と「IPFS」が混同されている記事も散見されますが、概念が少し異なります。
「Filecoin」というプロジェクトは、2017年に約300億円の資金調達に成功しており、暗号技術の歴史上でもかなり大きなプロジェクトであるといえます。
HTTP vs IPFS
上記、左がHTTP(Hypertext Transfer Protocol)、右がIPFSによる通信の大まかな仕組みです。
HTTPは、現在私たちが通信する際の主要なプロトコルとして用いられています。
HTTPの場合、webページやクラウドサービスを利用するには企業が持つサーバーにアクセスする必要があります。
この場合、管理者である企業が膨大なサーバーを保持することでサービスを成り立たせているので、HTTPを用いたシステムは「中央集権的」であると言えます。
一方、IPFSではこの「管理者」が存在せず、ネットワーク上の参加者が直接コンテンツを管理するpeer to peer通信を採用しています。
この仕組みは分散的かつ「非中央集権的」なシステムです。
アドレス vs コンテンツ
例として、音楽ストリーミングサービスを挙げます。
現在、「Apple Music」「Spotify」「Amazon Music」など、企業ごとにコンテンツが提供されており、多数の選択肢がユーザーに示されています。
これは、たとえ同じ楽曲(コンテンツ)でも各企業の持つサーバーが異なっていることが原因です。
このように、管理者のサーバーによってコンテンツが指定される既存の仕組みは、「アドレス型」(ロケーション型とも呼ばれる)といいます。
一方、IPFSを用いた場合、「管理者」が存在しなくなることでプラットフォームへの依存が解消され、楽曲自体の値段で取引されるようになります。
このように、「コンテンツ」自体によって値段が決まっており、サーバーの位置に依存しない仕組みを「コンテンツ」型であるといいます。
HTTPの問題点
現在私たちが使用している、HTTPには次のような問題点があります。
1点目は、セキュリティの脆弱性についてです。既存の仕組みでは、
・アクセスに関するすべてのコントロール権が管理者に集中してしまう
・企業内の開発者がそれぞれ別の国で開発を進めたい場合にも中央のレポジトリで管理する必要があり、業務に支障をきたす
・管理者がアクセスを自由に制限出来たり、情報を自由に改ざんできる
といった問題があります。
2点目は、サーバーの負荷についてです。
従来の通信方法は、管理者である企業が常にサーバーを安定稼働させなければならず、アクセスの数が増えた場合でも、遅延なく応答するためのインフラを準備しないといけません。
そして、IPFSはこれらの弱点を補完する、画期的な技術とされています。
IPFSの将来性
IPFSは、既存の中央集権型サービスへの参入障壁を取り払う「分散型エコシステム」として、様々な企業が活用し始めています。
更に日々改良が進んでおり、現時点で最新の「IPFS 0.5.0」は、世界中の開発者が開発環境を共有できる「コンテナイメージ」を効率的に使用できる技術とされています。
実例として、Netflixは「IPFS 0.5.0」を活用し、独自のコンテナ管理プラットフォームである「Titus」の改良させることで、コンテナ配布の高速化に成功しています。
Netflixと同様に、IPFSネットワーク上でストレージを構築しようとするプロジェクトは年々増加しており、誰でも参加出来るストレージ市場が今後構築されていくことが予想されます。
参考
- Mundo Descentralizado: Introducción a IPFS
- Why The Internet Needs IPFS Before It’s Too Late
- Decentralized document version control using ethereum blockchain and IPFS