マルタ共和国におけるBlockcertsの社会実装と将来性

現在、LasTrustでインターンシップをしています、阿久津陽介(あくつようすけ)です。

筆者は現在アメリカの大学院でコンピュータサイエンスを学びつつ、Blockcertsを初め、ブロックチェーン証明書を用いた次世代教育型プラットフォーム「C-Lab」というプロジェクトに参加しています。(「C-Lab」について詳しくはこちらから。)

ですので「個人の見えざる価値を可視化する」をビジョンに掲げ、同じくBlockcerts標準のブロックチェーン証明書の普及を行っているLasTrustにおいて、今後ともこのPJを通じて学んだことを、生かしていければと思っています。

今回はコロナウィルス感染症の影響でこのプロジェクトが一時中断してしまったことと同時に、先んじてブロックチェーン技術の社会実装が進んでいるマルタ共和国でインターンシップをしながら、実際にBlockcertsがマルタ共和国でどのように実装され、今後導入されていくかを紹介していきます。
(Blockcertsについてはこちらから。)

なぜマルタ共和国なのか

マルタ共和国は、英語圏であることや、アフリカやヨーロッパ、中東にとって中心的な位置に存在しており、様々なグローバルテクノロジーコミュニティが頻繁にサミットやカンファレンスを行っています。そのため世界中の企業や経営幹部にとっては、マルタでネットワークを構築してビジネスチャンスに繋がるなど、イノベーションハブとしての役割を担っており、最先端の技術に非常に友好的な国です。

2019年9月には、マルタ共和国政府は「ブロックチェーンアイランド」計画を発表し、以降、規制や税制面でブロックチェーン技術を積極的に導入しています。

事実、主要な仮想通貨取引所が拠点をおいたり、コンサルティング会社がブロックチェーンに関する調査や推進のために支社を設けています。

マルタ共和国のBlockcertsの導入状況

2020年10月時点で、Blockcertsの導入が推進されているPJはこちらです。

・教育機関すべての卒業証明書、退学証明書

・すべての教員免許証

・すべての不動産賃貸契約書

2019年より開始された、マルタ共和国の教育機関すべてにおいて、生徒に卒業証明書をBlockcertsで発行するというPJは、2020年10月時点でほぼ完了していました。コロナウィルス感染症の影響で当初の予定より半年ほど早くこのマイルストーンを達成する見込みです。

さらにユニークな点は、生徒側のみならず、教員側にも教育免許証をブロックチェーン証明書で発行できるように実装が進んでいます。

マルタ共和国はEU加盟以降、英語環境、地中海気候という恵まれた立地から留学生がとても多い反面、教員の人員不足が問題視されています。
マルタ政府はブロックチェーン証明書を教員を中心に発行し、コロナ禍におけるジョブマッチングを円滑に進められるよう推進しています。

マルタ政府関係者は「ほぼすべての教育機関におけるブロックチェーン卒業証明書の発行を終了し、Institute for Tourism Studies(ITS); マルタ芸術科学技術大学(MCAST); 国立高等教育委員会(NCFHE); 教育雇用省(MEDE)自体が、ゴゾ島の4つの中学校の卒業生に退学証明書を発行しました。コロナウィルス感染症の拡大に伴い、スキルの可視化による雇用機会の創出を期待している。」と述べています。

この他にも、筆者がインターンシップを通じて経験した、不動産契約におけるブロックチェーン証明書の発行です。マルタ共和国における不動産契約においては、スマートコントラクトのデプロイ、及びオーナーへ向けたNFT(Non-fungible token)の設計、そしてブロックチェーン証明書の発行という一連の流れがすでに実装されつつあります。この内ブロックチェーン証明書に関しては実際に発行が進んでおり、2021年には全ての契約書がBlockcerts準拠のブロックチェーン証明書となる予定です。これを足がかりに、ブロックチェーンベースの企業登記システムの稼働を予定しています。

マルタ共和国におけるBlockcertsの今後の展望

マルタ共和国政府は2020年に、Blockcertsによるブロックチェーン証明書の発行を進めるLearning Machine社ととの新たな共同声明を発表しました。教育分野において卒業証明書のみならず、成績証明書の導入を進め、スキルの可視化によるEU圏の自由な学びや雇用機会に活かしていく考えです。

またBinanceの企業登記問題を始め、主に仮想通貨領域でこのような登記問題にBlockcetsが導入していくことをマルタの金融当局、MFSA(Malta Financial Services Authority)が発表しています。

以上、今回はマルタ共和国におけるBlockcerts導入状況と今後の展望に関する概観を解説しました。
LasTrustは「個人の見えざる価値を可視化する」をビジョンに掲げ、今回紹介させていただいたBlockcerts標準のブロックチェーン証明書発行SaaS「CloudCerts」の開発及び運営を行っています。先日『ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2020 』にて、審査委員会賞を受賞し、今後日本での導入を進めてまいります。

参考

・「ブロックチェーン島」マルタ、不動産賃借契約をブロックチェーンに登録

「ブロックチェーン島」掲げるマルタが仮想通貨・ブロックチェーン規制の戦略計画発表

Employers In Malta Will Soon Be Able To Verify Skills And Credentials Through Blockchain
Blockcerts. A new approach to Credentials for Education 2020 (video)

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