Verifiable Credentials発行プラットフォームまとめ【2020年版】

 

今回は、W3Cが提唱しているVerifiable Credentialsに則ったプラットフォームを紹介します。

W3C、及びVerifiable Credentialsについては過去の記事にまとめています。こちら → https://lastrust.io/2020/05/25/whatisverifiable-credentials/

また、今回はW3Cの標準仕様に則っていると確認が取れる事例のみに絞ってご紹介させていただきます。

・W3Cの標準仕様はこちら
Verifiable Credentials Data Model 1.0
Decentralized Identifiers (DIDs) v1.0

Verifiable Credential Platform

今回紹介するプラットフォームは以下になります。

・ERC-725、ERC-735

・Hyperledger Indy

・Microsoft Build 2020

ERC-725、ERC-735

ERC(Ethereum Improvement Proposals)ですが、Ethereumブロックチェーンのセカンドレイヤーにあたるサービスのうち、クレデンシャル(アイデンティティ情報)に用いられています。
その中で現状、最も注目されているIdentity規格と言えるのがこのERC725です。

ERC-725は、ERC-20トークンの標準化やweb3.js提唱者の一人として知られ、エンジニアでもあるFabian Vogelsteller氏が2017年に提案しました。

ERC725 Proxy Account & ERC735 Claim Holder より引用

EIPs(Ethereum Improvement Proposals)はオープンなドキュメントを持っており、誰でも改善を提案することができます。もともとの課題である、プライバシー保護、取引の速さについての議論はかなり活発になっています。(イーサリアム3.0とも呼ばれているようです。)

同様の例としてBitcoinのコミュニティ、BIP(Bitcoin Improvement Proposals)が挙げられます。

イーサリアムプラットフォームは、分散アプリケーションを記述する言語の1つである『Solidity』のインターフェースを定義していることが特徴で、 この仕様に基づき、Ethereumブロックチェーン上でクレデンシャルを流通させる仕組みを提供します。

詳細はここでは割愛しますが、 ERC725がIDのインターフェイスを取り扱い(スマートコントラクトをデプロイ)、ERC735がクレデンシャルの構造や取り扱いを定義するという点で役割が異なります。

ERC-735は直接DIDとして利用せず、W3CのDID形式でEthereumアドレスを包み込む(wrapping)して記載する方法も提案されています。非常にシンプルであるが故、プライバシー保護が今後の課題といえます。

イーサリアム上での議論や提案の詳しい内容は、バージョンのアップデートも含めた内容をまとめて公開します。

Origin Protocolとは?

 

 PR TIMES より引用

「Origin Protocol」はERCの代表的なプロジェクトです。日本でもBlockBase社が提携し、ERC-725の開発及びシェアリングエコノミーへの利用を目指しています。

主にAirbnbやUBERのようなシェアリングエコノミーで利用が検討されています。特徴として、アカウントに電話番号・Eメール・Airbnb・Facebook・Twitter・Googleといった複数のアカウントを紐づけることができ、実在する人物かどうかの証明だけでなく、紐付けアカウントの活動履歴から個人の信用が可視化されるプラットフォームとなっています。

Hyperledger Indy

Hyperledger Indyとは、分散型ID(DID)の提供を想定して開発されたパーミッション制(チェーンへのアクセスに許可が必要)のブロックチェーンです。The Linux Foundationが主催しており、Hyperledger Fabricなどの様々なプラットフォームを提供しています。

投稿用画像
Evolution of Hyperledger Indy, Aries and Ursa より引用

Hyperledger Indyによって提供されるツールやライブラリ(Indy-SDK)を用いることで、業界などに限定されない、相互運用可能な分散型身分証明を開発することができます。現在、相互運用性の実験を行うプロジェクト(Project Aries)が存在しています。

運転免許証やパスポート、保険証などに活用することで、グローバルアイデンティティを実現できるプラットフォームとして注目を浴びています。

下記のリンクにて、IBMがデモを公開しています。

https://www.youtube.com/watch?v=cz-6BldajiA&feature=youtu.be

Hyperledger の相互運用性についてですが、プロジェクトが同時並行で動くためにプロジェクト単位で成熟度が異なること・プロトコルがLedgerと密接に紐づいていること、といった課題への解決策が期待されています。

フィンランドのプロジェクト「Project Mercury」とは 

フィンランドでは、国内のさらなる経済発展や国際化に向けた取り組みの一環として、 Project Mercuryというプロジェクトを開始しています。

このプロジェクトは、海外の起業家に「起業しやすい環境を提供する」という目的のもと、金融機関や税務署、法務局などが起業手続きの簡素化、デジタル化を推進するべく2018年5月にスタートしました。

このプロジェクトの構築にはHyperledger Indyが活用されています。企業に対しアイデンティティを付与し、企業プロセスをすべてデジタル化及び分散化させることで、会社情報が保証され、いつでも共有できる仕組みです。

Microsoft Build 2020

Microsoftは、2018年にDIDに関する自社のホワイトペーパーを公開して以来、DIDの開発に積極的に携わってきた経緯があります。

実証例こそありませんが、Windowsのエンタープライズ向けのシェアを考えると、かなり注目度の高い取り組みといえます。

今回取り上げるのは、2020年5月に発表された、Azureを用いた分散型の学生証アプリ(Student ID)です。

Issuer DID
https://didproject.azurewebsites.net/docs/verifiable-credentials.html より引用

HPでは、上記の大学「Contoso University」の学生の証明プロセスを紹介しています。

・大学側が発行したVerifiable Credentialsをユーザーが登録する
・書店などで学割を使いたい場合は、証明書(学生証)を提示する
・スマホには別の証明書も登録できる
といった使い方があります。

アプリは Microsoftが開発・提供している「Microsoft Authenticator」が採用されています。

証明書の検証には、ブロックチェーン技術を用いた分散型の公開鍵基盤(Decentralized Public Key Infrastructure)の仕組みを利用しており、登録された公開鍵を照合します。この仕組みは 「W3C」(World Wide Web Consortium)の策定した標準に基づいて開発されています。

なお、ホームページにはデモが公開されています。

https://didproject.azurewebsites.net/docs/verifiable-credentials.html より引用
https://didproject.azurewebsites.net/docs/verifiable-credentials.html より引用

このDIDシステムはBitcoinのセカンドレイヤーでの実装であり、Microsoft社が開発したION(Identity Overlay Network)はソースコードも公開されています。ソースコードはこちら→ https://github.com/decentralized-identity/ion/

結論

上記のプラットフォームは非常に新しく、改良速度がとても速いです。どのOSSのプロジェクトを使うかは、最新の仕様を確認して考える必要があります。

信用度の高い学術的な情報としては、2018年のPeer review論文「 Blockchain and the Future of Digital Learning Credential Assessment and Management 」が挙げられ、

” The most credible model is MITís / Learning Machineís Blockcerts.″(最も信用度の高いモデルはBlockcertsである。)

と結論付けられており、世界的に見ても、当社で採用しているBlockcertsは完成度が高い発行プラットフォームであるとされています。

Blockcertsについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

参考

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