LasTrustインターン手記「僕がアメリカ留学を決めた理由」

LasTrustでインターンをしている阿久津陽介です。

コロラド州立大学の大学院生として、過去連載した「C-Lab」プロジェクトのリサーチと開発を担当しています。連載でも書きましたが、私がアメリカ留学を決めた理由は「C-Lab」のデジタルクレデンシャルの計画に強く興味を惹かれたことがきっかけです。

今回は留学を決心した背景と、「C-Lab」プロジェクトで得た、クレデンシャルに対する海外の捉え方をまとめました。

ブロックチェーンとの出会い

Blockchain Technology - Advantages And Disadvantages - Garry McGuire

私自身小学生時代、オーストラリアへのホームステイをきっかけに、将来は海外で働きたいという思いは常に持っていました。

そして社会人経験を少し得た後、夢を実現すべく、カリフォルニアにある大学院に留学しました。

アメリカでの授業はまさに多様な切り口の基に成り立っており、世界の見方がとても斬新です。

例えば「GDPという数字は、もともとは戦争をなくすためにつくった数字である」ということを、かつて植民地支配下だった国籍の人は常識であるかのように知っています。

つまり、かつて先進国は戦争によって植民地を勝ち取ることで、自国が豊かになると考えていた経緯があります。新興国に経済投資すればROIが上がることを示す指標であるということです。そういった切り口から数字を見ていくと数値に対して抱く考え方や在り方の根本を見直さなければという考え方になります。

その他にも、スノーデンの内部告発、ナチスドイツがユダヤ人大虐殺の背後で稼働したIBMのパンチカード式コンピュータなど、「テクノロジーがどうあるべきか」を常に世界史から考えるようなカリキュラムが組まれており、多様性を尊ぶアメリカの文化を感じることができました。

こういった斬新な授業の中で、ブロックチェーンもよく上がる議題の一つです。というのもアメリカ国民や政府は近年、巨大テック企業のプラットフォームの権力と不完全さを疑問視しています。大規模な個人情報の漏洩や、検索エンジンのバイアス問題、政治的、宗教的な問題を指摘する報道が相次いだためです。

この流れはEUも同様であり、かつてフランス革命や戦争で多くの犠牲を払ったことから、権利と自由を脅かす可能性を秘めた巨大IT企業に対し、GDPRという法と倫理で規制をかけています。

両者に共通する、「全員をフラットな関係で繋ぎ、歪みのない自由と公平を保つ画期的なシステム」がブロックチェーンであり、現在も盛んに社会実装が行われています。

このような背景を学びながら、その中でラーニングエコノミーのプロジェクト「C-Lab」に出会いました。

「C-Lab」は「知」のベーシックインカム

これは当時「C-Lab」のリサーチを担当している現教授が、このプロジェクトを紹介してくれた時の言葉です。

コロラド州はカリフォルニア州に比べて大学進学率が低く、政府も各教育機関も15年以上試行錯誤を続けていました。アメリカの移民規制やブレグジットのような政策が追い打ちとなり、今後世界各国で教育格差が広がってしまう懸念があります。

また、日本ではあまり馴染みのない感覚かもしれませんが、学歴社会のアメリカやヨーロッパ、中国では学歴の虚偽が多発しており、企業側の採用担当者は日々頭を悩ませているというのが現状です。

こういった国際的な問題に、ブロックチェーンを用い、民間企業も巻き込んだ壮大な実験に魅了され、足を踏み入れました。

不思議かもしれませんが、ライバルであるはずの巨大IT企業のエンジニアの方々が、惜しみなく英知を分け合っている場面が数多くあります。

彼らは、企業や利益関係なく、インターネットがあらゆる機会を与え、世界中誰にでもコンテンツを届けられるという「自由」と「公平」な社会を本気で実現させようとしています。

「クレデンシャル」に対する捉え方と今後の展望

「C-Lab」でも分散型アイデンティティやVerifiable Credentialsは最重要な土台となる考え方と位置付けられています。これはお話した通り、アメリカ、ヨーロッパの歴史の延長線上の考え方であるためです。

つまり、世界的な捉え方として、今後のあらゆるプロジェクトの根本に「クレデンシャル」は欠かせない概念であるということです。

一つ身近な例を挙げると、既にアメリカでは検証可能な卒業証明書の発行が進んでおり、大学院への進学の際も欧米の学位証明があればいくつかの試験の優遇措置があります。一方留学生には、たとえコンピュータサイエンスの学位があったとしても必ず、数学の試験を受けなければなりません。これはもちろんビジネス的な理由もありますが、学位証明が簡単に検証できないことも理由として挙がっています。

こういった現状を受け、すでに中国や東南アジア各国は卒業証明書を検証可能にするプロジェクトが進んでおり、アメリカでは、検証可能な卒業証明書を所有する留学生に対し試験の優遇の検討している大学も出てきています。

あまり日本国内にいると馴染みのない話かもしれませんが、こういった世界的な動きや捉え方は今後も拡大していくと思います。

残念ながら現時点ではコロナ禍の中、「C-Lab」のプロジェクトの進行は止まってしまっています。

その最中に、「個人の見えざる価値を可視化する」というビジョンを掲げているLasTrustに出会えた事は、偶発的に感じ難いものがありました。というのも「C-Lab」自体、全く同じ哲学を掲げて進行しているプロジェクトだったからです。LasTrustでは海外のデジタルクレデンシャルの情報発信と開発に携わり、C-Labではプロジェクトの研究支援を続け、世界のクレデンシャルのアップデートに寄与したいと考えています。

私自身、日本でも共通した考えのもとに取り組まれている方々がいらっしゃったことに、この上ない嬉しさを感じつつ、アメリカや他プロジェクトで得た知識を惜しみなく共有できたらと思います。

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