個人の学位や資格のような社会的信用資産をデジタル化するブロックチェーン証明書、及びデジタルバッジを提供するLasTrustは、この度リカレント教育を提供する株式会社ビジネス・ブレークスルーが運営する大前経営塾の卒塾生55名に対し、ブロックチェーン修了証書の提供を行いました。
ブロックチェーン証明書とは
ブロックチェーン証明書とは、従来のような紙の証明書ではなく、ブロックチェーンを用いて発行されるデジタル証明書です。証明書をデジタル化することで、スマホやWebブラウザ上での管理・閲覧が可能となりました。(当社ブロックチェーン証明SaaS「CloudCerts(読み:クラウドサーツ 。特許出願済み)」から発行)
ブロックチェーン証明書と紙の証明書との違い
ブロックチェーン証明書は、ブロックチェーンの分散型台帳技術を活かして発行されています。それゆえ、 紙の証明書と比較すると次のようなメリットを持ちます。
- 発行にかかる資源と時間を節約できる
- 保管場所を用意する必要がなく、管理が容易である
- オンライン上で共有できる
- 内容が正しいかその場で検証できる
- 改ざんが非常に困難、紛失しても再発行が容易である
- 証明書発行元の機関がサービス停止した場合でも、過去に発行された証明書の真正性※を立証できる
- 有効期限を付けられる(途中で証明書の更新ができる)
- 拡張性がある(スコアや属性などの情報を追加できる)
- 受注から発行、証明書授与までオンライン上(非接触)で実現できる
このように、紙の証明書をブロックチェーン証明書に置き換えるメリットは多岐に渡ります。特に、アフターコロナの時代においてオンライン教育のニーズは高まると予想され、非接触で公式な証書を学習者に提供できる点は高く評価できると考えられます。実際、今回のビジネス・ブレークスルー社のプロジェクトでは、受注から発行、証明書授与までの全工程がオンライン上で完結しました。
さらなる詳細は次のサイトで解説しております。
→ブロックチェーン証明書と紙の証明書の違いとは
※真正性:”正当な権限において作成された記録に対し、虚偽入力、書き換え、消去、及び混同が防止されており、かつ、第三者から見て作成の責任の所在が明確であること” (厚生労働省, 2008)
ブロックチェーン証明SaaS
「CloudCerts」の仕組み
LasTrustは、ブロックチェーン証明SaaS「CloudCerts」を提供していますが、そのアーキテクチャはブロックチェーン証明の標準規格「Blockcerts」をベースにしています。Blockcertsは、Learning Machine社が提供するOSSであり、発行機関とブロックチェーン証明書の紐付けるための画期的な仕組みが含まれています。
発行機関と証明書の紐付け
不正な偽造を未然に防ぎ、発行機関とブロックチェーン証明書の紐付けをしているのがデジタル署名という暗号鍵技術です。デジタル署名とは、「本人であること」と「改ざんされていないこと」の証明が強化された電子署名です。実際に「CloudCerts」でのデジタル署名は次のような流れになります。
- 発行機関(署名者)が、ビットコインやイーサリアムといったパブリックブロックチェーンのウォレットアカウントを持つことで、アドレスとしての公開鍵と秘密鍵を得る。(秘密鍵の運用が難しい場合は、LasTrust側で管理を代行)
- 発行機関は学習者の氏名や証明書の記載情報などを CloudCertsへ 送信する。
- CloudCertsは、2で送信されてきた情報に証明書のID等の付加情報を追加し、ブロックチェーン証明書の原本であるjsonファイルを生成、さらにハッシュ関数を用いてそのファイルを暗号化し、ハッシュ値を得る。
- CloudCertsは、3で得られたハッシュ値を発行機関の公開鍵、秘密鍵を用いて任意のチェーンに書き、記録する。
- 発行機関は、3で得られたブロックチェーン証明書(jsonファイル)を学習者に送信する。
- 学習者は受け取ったブロックチェーン証明書を「Blockcerts Wallet」というアプリを通して表示したり、内容が正しいかブロックチェーンに照会をかけて検証できる。
このようにデジタル署名を用いてブロックチェーンに証明書のデータを格納することで、真正性を担保しつつ、発行機関とブロックチェーン証明書の紐付けができるようになっています。
ブロックチェーン証明書の拡張性
最近では、教育現場にテクノロジーを適用し、学習の効率化、個別最適化、そしてオンラインでの学びを実現する「EdTech」が注目されています。
ブロックチェーン証明書、及びデジタルバッジもEdTechの一つです。前述のように学習者の学習履歴(スタディログ)を担保するのにブロックチェーンは最適なネットワークであり、チェーン上に学習者の学びの実績を記録し、生涯にわたって低コストで利用・検証ができます。これは他の技術では実現できない特徴です。
また、ブロックチェーン証明SaaS「CloudCerts」は学位や資格といった教育機関向けの証明書だけではなく、データとして扱える様々な書面に対しても、デジタル化してブロックチェーンによって分散管理することができます。 例えば、
- 契約書
- 社員証
- 遺言信託
- 会計事務所の証憑
など、用途は多岐に渡ります。CloudCertsはあらゆるデータを暗号化できるため、証明書の種類や書式を問わず活用できます。
当社では、今後様々な業態でブロックチェーン証明を活用いただけるよう、UIのさらなる改善に取り組んでいます。
参考文献:厚生労働省(2008) , 『医療情報システムの安全管理に関するガイドライン』https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/12/dl/s1219-6b_0003.pdf