ブロックチェーンを利用したデジタル卒業証明書とその他証明書プラットフォーム比較まとめ

今回は、ブロックチェーン技術を利用した、デジタル卒業証明書とその他証明書のプラットフォームを中心にまとめて比較しました。

稼働しているデジタルクレデンシャル発行プラットフォーム4種

今回取り上げたプラットフォームは、世界で既に実装済み、もしくは試験段階を終えたものを取り上げます。(2020年7月時点)

・ Blockcerts

・ uPort

・ Hyperleger Fabric

・ e-scroll (Luxtag)

Blockcertsについて

BlockcertsはMITフリー&オープンソースソフトウェアライセンスの下で公開されています。既にアメリカやヨーロッパの幾つかの教育機関では、Blockcertsを使った卒業証明書を発行しています。

世界中で広がりを見せるBlockcertsですが、採用される理由として、

  • 教育機関が独自のアプリケーションを構築する必要がない。
  • 発行者はすべての記録を保持する。受信者(学生、卒業生、雇用者等)は、政府、企業、または大学が別のレコードプロバイダーに切り替えた場合でも、受信したすべての記録を保持。
  • 複数のブロックチェーンを使用。
  • GDPR「忘れられる権利」に準拠。

以上が挙げられます。 ただし基盤となるネットワークに対するコントロール不可能であり、ネットワークにおける大規模な変更がある場合には影響が生じるというデメリットもあります。

Blockcertsの仕組みについてはこちら

uPortによる資格情報による証明(IPFS)

uPortは資格や職歴、学歴情報をブロックチェーン上に記録し、学位や資格を所有する本人が、自身で管理可能な自己主権型アイデンティティを実施しているオープンソースプロジ ェクトです。なので証明書のみならず、様々なユースケースを想定しています。

既にアメリカでは、uPortを用いて、身分証明や個人情報、医療情報や、自動車免許、住民票などにも取り組んでいく方針を示しています。またスイスを中心とした、「 Crypto Valley Association 」では uPortと連携し、 様々な社会実験を既にに行っています。

今回はuPort の資格証明のアルゴリズムを紹介します。

投稿用画像
All you need to know about uPort Identity management より引用

証明の手順

  1. uPort用のQRコード (スマホの場合URIを読み込む)
  2. デプロイ→uPortアプリ上でユーザーのaddressの共有を求める。
  3. 同意した際、デスクトップの場合はChasqui、モバイルの場合はJWTに addressがpostされる。
  4. ブラウザはこれらの情報を受け取り、ブラウザからQRコードまたはURIを削除する。
  5. uPortアプリが送信する準備ができたら、JWTのデータをエンコードじて署名。
  6. attestation_tokenは、push_tokenと共にdAppsとサーバーがどのuPortモバイルアプリにもpush通知メッセージを送信出来るようにするサーバー(Pututu)に送信。 ⦅push通知が有効な場合⦆
  7. Pututuは、push_tokenの署名とユーザのIPFSにある公開鍵を照合してから、attestation_tokenをuPortアプリへ転送する。
  8. attestation_tokenは、QRコードorURIにエンコードされる。ユーザーはuPortアプリでこれを読み込む。 ⦅pushが無効な場合⦆
  9. uPortアプリ上で、attestationに同意するか尋ねられる。

採用するメリットとして、下記が挙げられます。

  • 多様なユースケースが想定されている。
  • uPortIDを分散したまま保管できる。
  • ユーザー管理に依存しない。紛失してもuPort ID で管理可能

uPortはアメリカの金融機関からヨーロッパの一部までかなりの広がりを見せています。

しかしながら、 uPortがIDを重視している点を考えると、イーサリアムのように誰でも見られるブロックチェーンを利用する際に、ユーザーのプライバシーをどのように確保するかという疑問があり、社会実装に進んでいないという欠点があります。

Hyperledger Fabric

Hyperledger Fabric は、2016年に発足した「The Linux Foundation」がサポートするプロジェクト、「Hyperledger」のうちの一つです。

Hyperledgerではエンタープライズ向けのパーミッション型(許可型)ブロックチェーンを構築するためのフレームワークやライブラリなどが公開されています。

OSSであり、モジュール型で開発が進められており、 IBM、Intel、Ciscoのサポートにより、一流のハイテク企業からの強力な支援を受けています。

国内でもSony Grobal Educations が、交換留学生候補者が提出した教育証明書の内容と、ブロックレコードに保存されている学習データ(コースの記録や成績など)を比較するためにFabricを採用しています。

https://blockgeeks.com/guides/hyperledgerより引用

<証明の手順>

  1. ブロックチェーンネットワークの管理者がCA(Certificate Authority)にユーザーの登録。
  2. CAは登録されたユーザーに紐づくSecret(パスワード)を管理者に送信。
  3. 管理者は、登録したユーザーにSecretを送信。
  4. ユーザーはCAに自分自身のIDとSecretをCAに送信。
  5. CAはユーザーのIDとSecretを照合。ブロックチェーンにアクセスするための証明書(Ecerts)をユーザーに発行。

採用するメリットとして、下記が挙げられます。

  • 参加者及び各参加者の権限のコントロールが可能 。(プライベートチャネル)
  • ID管理などのコンポーネントを簡単に含めること ができる。(モジュール式アーキテクチャ)
  • 高速処理が可能。(業界横断システムに向いている)

プライベート型でプライバシーの問題も解決できますが、ユースケースが未だ少ないことや巨大企業の支援に対する懸念があり、採用に至っていない企業も多いです。

e-scroll (Luxtag)

e-Scrollシステムは、企業と顧客がNEMブロックチェーンでデジタル化された証明書を提供し、貴重な資産の信頼性と所有権を保護できるようにするプロジェクトです。

マレーシアで唯一、ブロックチェーン技術で特許を取得していることもあり、BATを始めとした中国企業からも注目されています。

e-Scrollシステムは、闇市場で作成および販売されている偽造学位および卒業証書の増加に対処するために開発されています。マレーシアの大学からの認定の評判と完全性を保護するためのプロジェクトです。

https://www.luxtag.io/ より引用

パブリックチェーンであるNEMを利用して、Luxtag独自のプライベートチェーンを築くというコンソーシアム型ブロックチェーンです。コンソーシアムにはマレーシアの6つの公立大学が参加しています。

特徴として下記が挙げられます。

  • プライベートチェーンにQRコードをタグ付けし、リンク化。
  • 高速処理が可能。(業界横断システムに向いている)
  • プライベートチェーンがパブリックチェーン(NEM)と紐づいていること。

プライベートチェーンでありながら、Hyperledger Fabricと異なる点として、パブリックチェーンとの互換性が挙げられます。信用性の担保と承認の速さから、人口の多い中国やインドで注目されています。

ただし現時点ではLuxtagのプライベートチェーン内の具体的なアルゴリズムが公開されていません。

結論

今回は学位および能力証明に焦点を当て、プロジェクト絞って纏めました。コンソーシアム型ブロックチェーンは、高速に承認できることや柔軟性の面でも優れている一方、あくまでも「特定のメンバーで承認する」ということが前提になっています。

つまりあくまで「中央集権的な技術」であり、証明書への信頼性や不特定多数への共有のしやすさという点では、パブリックチェーンかつ社会実装済みであるBlockcertsが、現在のデジタルクレデンシャルプラットフォームの中で特に可用性に優れていると言えそうです。

参考URL

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