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C-Labプロジェクト参加団体リストと各団体の役割まとめ

  今回は、「ラーニングエコノミー」の概念を基にして行われているプロジェクトの一つ、「C-Lab」について、具体的な参加団体や企業とその役割をまとめました。 「C-Lab」の概要についてはこちら。   「C-Lab」には、既に上記のような企業が参加を表明しており、教育を中心に様々な領域に応用することが想定されています。   「Identity Systems」     このプロジェクトにおける「土台」と位置付けられているのが「Identity Systems」です。 「Identity Systems」では、人や組織のための独立したアイデンティティ「Self-Sovereign Identity(SSI)」の実現を前提としています。「C-Lab」プロジェクトは今後様々な業界や地域からの参加が想定されるため、「透明性が高く、所有者が真にそのデータを手にする、もしくは提供するIDといえるものでなくてはならない。」とされているからです。 そのため、デジタルIDのコードはオープンソースで、ネットワークは分散型で台帳技術を利用して運用される「Sovrin」、そしてその技術を業界横断的に展開している「IBM」や「Microsoft」が開発に携わっています。   「Badging and Credential Systems」     「Badging and Credential Systems」では、改ざん不可能な資格情報や卒業証明書、研究機関の達成度などの証明・検証を可能にするための開発を行います。 ここでは、verifiable credentialsに準拠し、ブロックチェーン技術を基にしたオープンソース「blockcerts」や、複数の教育機関にまたがった質の高いリソースを提供するOpenPathways標準に取り組む「IMS Global」などが参加しています。   「Research Information Systems」     「Research Information Systems」では、学術論文や最先端の研究リソースをユーザーに提供することを目的としています。 各ユーザーへのコンテンツの提供のみならず、「Badging and Credential Systems」と連携し、OpenBadgeによる研究内容の透明性の確保や、ユーザーへのインセンティブの設計まで幅広く行います。 学術情報メディア「arXiv」や、Googleの研究開発部門である「Google X」がプラットフォーマー、またはリサーチに協力し、開発を行っています。   「Library and Metadata Systems」     「Library and Metadata Systems」では、「Research Information Systems」と同様に、公共図書館や学術図書館のリソースや様々なコミュニティなどを提供することを目的としています。 その他にも、参加者が使いやすいように、ユーザーの様々なデータを標準化する役割も担っています。 オープンで分散型のデータエコシステムを作成し、教育やスキル等のデータの標準化を進めている「T3 innovation network」や、世界中の教育機関の図書館や美術館のリソースをクラウドベースで提供している「OCLC」が参加しています。   「Learning Management Systems」     「Learning Management Systems」は、ユーザーに学びのコミュニティやコンテンツを提供するシステムを提供します。 ユーザーは様々なプラットフォームをシームレスに選定することができ、学びたいコンテンツによって使い分けることができます。 プラットフォームに参加している企業は、ユーザーから得た学習データのログや成果物などのデータをブロックチェーン上に適切に管理し、改ざんや情報漏洩を防いでいます。 また、「Research Information Systems」と連携し、学習成果や成果物、資格証明の価値を可視化する役割もあります。 世界の大学教育機関で最もプラットフォームとしてのシェアが高く、google docsやMicrosoft officeなどの異なったシステム仕様にも優位性がある「Canvas」や、世界最大級のオンラインコンテンツプラットフォームである「edX」が参加しています。   その他採用やソフトスキルを養う機会を提供   その他にも、市場とユーザーの能力の正確な連動を目的として、総合求人サイト「Glassdoor」や「Linkedin」がリソースの提供を発表しています。 また、多角的な視点やアクティブラーニング、対人コミュニケーションスキルを養える場も提供するため、「SAP」や「Salesforce」等の企業がプロジェクトへの参加を表明しています。    

IPFSとは?

  「Web3.0」において、Dappsやその他のブロックチェーンサービスの推進を後押しする技術として「IPFS」(Inter Planetary File System)が注目を集めています。 今回は、そのIPFSの仕組みや最新の動向をまとめました。   IPFSについて   Filecoinが提供している分散型ストレージサービスです。 IPFSは「ブロックチェーン」ではなく、シンプルにノードとノード間のデータを移動する「プロトコル」です。 もともとは2014年に創業した、「Protocol Labs」という研究開発企業によって開発され、提唱されました。 同社が開発した仕組みの一つに「IPFS」があり、これに基づいたプロジェクトが「Filecoin」です。 *「Filecoin」と「IPFS」が混同されている記事も散見されますが、概念が少し異なります。 「Filecoin」というプロジェクトは、2017年に約300億円の資金調達に成功しており、暗号技術の歴史上でもかなり大きなプロジェクトであるといえます。   HTTP vs IPFS     上記、左がHTTP(Hypertext Transfer Protocol)、右がIPFSによる通信の大まかな仕組みです。 HTTPは、現在私たちが通信する際の主要なプロトコルとして用いられています。 HTTPの場合、webページやクラウドサービスを利用するには企業が持つサーバーにアクセスする必要があります。 この場合、管理者である企業が膨大なサーバーを保持することでサービスを成り立たせているので、HTTPを用いたシステムは「中央集権的」であると言えます。 一方、IPFSではこの「管理者」が存在せず、ネットワーク上の参加者が直接コンテンツを管理するpeer to peer通信を採用しています。 この仕組みは分散的かつ「非中央集権的」なシステムです。   アドレス vs コンテンツ   例として、音楽ストリーミングサービスを挙げます。 現在、「Apple Music」「Spotify」「Amazon Music」など、企業ごとにコンテンツが提供されており、多数の選択肢がユーザーに示されています。 これは、たとえ同じ楽曲(コンテンツ)でも各企業の持つサーバーが異なっていることが原因です。 このように、管理者のサーバーによってコンテンツが指定される既存の仕組みは、「アドレス型」(ロケーション型とも呼ばれる)といいます。 一方、IPFSを用いた場合、「管理者」が存在しなくなることでプラットフォームへの依存が解消され、楽曲自体の値段で取引されるようになります。 このように、「コンテンツ」自体によって値段が決まっており、サーバーの位置に依存しない仕組みを「コンテンツ」型であるといいます。   HTTPの問題点   現在私たちが使用している、HTTPには次のような問題点があります。 1点目は、セキュリティの脆弱性についてです。既存の仕組みでは、 ・アクセスに関するすべてのコントロール権が管理者に集中してしまう・企業内の開発者がそれぞれ別の国で開発を進めたい場合にも中央のレポジトリで管理する必要があり、業務に支障をきたす・管理者がアクセスを自由に制限出来たり、情報を自由に改ざんできる といった問題があります。 2点目は、サーバーの負荷についてです。 従来の通信方法は、管理者である企業が常にサーバーを安定稼働させなければならず、アクセスの数が増えた場合でも、遅延なく応答するためのインフラを準備しないといけません。 そして、IPFSはこれらの弱点を補完する、画期的な技術とされています。   IPFSの将来性     IPFSは、既存の中央集権型サービスへの参入障壁を取り払う「分散型エコシステム」として、様々な企業が活用し始めています。   更に日々改良が進んでおり、現時点で最新の「IPFS 0.5.0」は、世界中の開発者が開発環境を共有できる「コンテナイメージ」を効率的に使用できる技術とされています。 実例として、Netflixは「IPFS 0.5.0」を活用し、独自のコンテナ管理プラットフォームである「Titus」の改良させることで、コンテナ配布の高速化に成功しています。 Netflixと同様に、IPFSネットワーク上でストレージを構築しようとするプロジェクトは年々増加しており、誰でも参加出来るストレージ市場が今後構築されていくことが予想されます。 参考 Mundo Descentralizado: Introducción a IPFS Why The Internet Needs IPFS Before It’s Too Late Decentralized document version control using ethereum blockchain and IPFS  

ブロックチェーンを利用したデジタル卒業証明書とその他証明書プラットフォーム比較まとめ

今回は、ブロックチェーン技術を利用した、デジタル卒業証明書とその他証明書のプラットフォームを中心にまとめて比較します。 稼働しているデジタルクレデンシャル発行プラットフォーム4種 今回取り上げたプラットフォームは、世界で既に実装済み、もしくは試験段階を終えたものです。(2020年7月時点) ・ Blockcerts ・ uPort ・ Hyperleger Fabric ・ e-scroll (Luxtag) Blockcertsについて BlockcertsはMITフリー&オープンソースソフトウェアライセンスの下で公開されています。アメリカやヨーロッパの幾つかの教育機関では、既にBlockcertsを使った卒業証明書を発行しています。 世界中で広がりを見せるBlockcertsですが、採用される理由として、 教育機関が独自のアプリケーションを構築する必要がない。 発行者はすべての記録を保持する。受信者(学生、卒業生、雇用者等)は、政府・企業・または大学が別のレコードプロバイダーに切り替えた場合でも、受信したすべての記録を保持。 複数のブロックチェーンを使用。 GDPR「忘れられる権利※」に準拠。 以上が挙げられます。 ただし基盤となるネットワークはコントロール不可能であり、ネットワークにおける大規模な変更がある場合に影響が生じるというデメリットもあります。 Blockcertsの仕組みについてはこちら。 ※忘れられる権利:ユーザーがサービスを利用する際にパーソナルデータをサービス側に提供した場合、ユーザーからの削除依頼・一定期間アクティブでない場合に、データを削除するようサービス側に求める権利 uPortによる資格情報による証明(IPFS) uPortは資格や職歴、学歴情報をブロックチェーン上に記録し、学位や資格を所有する本人自身が管理可能な自己主権型アイデンティティを実施しているオープンソースプロジ ェクトです。なので証明書のみならず、様々なユースケースを想定しています。 既にアメリカでは、uPortを用いて、身分証明や個人情報、医療情報や、自動車免許、住民票などのデジタル化にも取り組んでいく方針が示されています。またスイスを中心とした「 Crypto Valley Association 」では uPortと連携し、 様々な社会実験を行っています。 今回はuPort の資格証明のアルゴリズムを紹介します。 証明の手順 uPort用のQRコード (スマホの場合URIを読み込む) デプロイ→uPortアプリ上でユーザーのaddressの共有を求める。 同意した際、デスクトップの場合はChasqui、モバイルの場合はJWTに addressがpostされる。 ブラウザはこれらの情報を受け取り、ブラウザからQRコードまたはURIを削除する。 uPortアプリが送信する準備ができたら、JWTのデータをエンコードじて署名。 attestation_tokenは、push_tokenと共にdAppsとサーバーがどのuPortモバイルアプリにもpush通知メッセージを送信出来るようにするサーバー(Pututu)に送信。 ⦅push通知が有効な場合⦆ Pututuは、push_tokenの署名とユーザのIPFSにある公開鍵を照合してから、attestation_tokenをuPortアプリへ転送する。 attestation_tokenは、QRコードorURIにエンコードされる。ユーザーはuPortアプリでこれを読み込む。 ⦅pushが無効な場合⦆ uPortアプリ上で、attestationに同意するか尋ねられる。 採用するメリットとして、下記が挙げられます。 多様なユースケースが想定されている。 uPortIDを分散したまま保管できる。 ユーザー管理に依存しない。紛失してもuPort ID で管理可能 uPortはアメリカの金融機関からヨーロッパの一部までかなりの広がりを見せています。 しかしながら、 uPortがIDを重視している点を考えると、イーサリアムのように誰でも見られるブロックチェーンを利用する際に、ユーザーのプライバシーをどのように確保するかという課題があり、社会実装に進んでいないという欠点があります。 Hyperledger Fabric Hyperledger Fabric は、2016年に発足した「The Linux Foundation」がサポートするプロジェクト、「Hyperledger」のうちの一つです。 Hyperledgerでは、エンタープライズ向けのパーミッション型(許可型)ブロックチェーンを構築するためのフレームワークやライブラリなどが公開されています。 OSSである、モジュール型で開発が進められている、といった特徴の他、 IBM・Intel・Ciscoのサポートにより一流のハイテク企業からの強力な支援を受けています。 国内でも、Sony Grobal Educations が、交換留学生候補者が提出した教育証明書の内容と、ブロックレコードに保存されている学習データ(コースの記録や成績など)を比較するためにFabricを採用しています。 <証明の手順> ブロックチェーンネットワークの管理者がCA(Certificate Authority)にユーザーの登録。 CAは登録されたユーザーに紐づくSecret(パスワード)を管理者に送信。 管理者は、登録したユーザーにSecretを送信。 ユーザーはCAに自分自身のIDとSecretをCAに送信。 CAはユーザーのIDとSecretを照合。ブロックチェーンにアクセスするための証明書(Ecerts)をユーザーに発行。 採用するメリットとして、下記が挙げられます。 参加者及び各参加者の権限のコントロールが可能 。(プライベートチャネル) ID管理などのコンポーネントを簡単に含めること ができる。(モジュール式アーキテクチャ) 高速処理が可能。(業界横断システムに向いている) プライベート型のためプライバシーの問題も解決できますが、ユースケースが未だ少ないことや巨大企業の支援に対する懸念があり、採用に至っていない企業が多いです。 e-scroll (Luxtag) e-Scrollシステムは、企業と顧客がNEMブロックチェーンでデジタル化された証明書を提供し、貴重な資産の信頼性と所有権を保護できるようにするプロジェクトです。 闇市場で作成・販売されている偽造学位および卒業証書の増加に対処し、マレーシアの大学からの認定の評判と完全性を保護するために開発されています。 マレーシアで唯一、ブロックチェーン技術で特許を取得していることもあり、BATを始めとした中国企業からも注目されています。 e-Scrollシステムは、パブリックチェーンであるNEMを利用して、Luxtag独自のプライベートチェーンを築くというコンソーシアム型ブロックチェーンです。コンソーシアムにはマレーシアの6つの公立大学が参加しています。 特徴として下記が挙げられます。 プライベートチェーンにQRコードをタグ付けし、リンク化。 高速処理が可能。(業界横断システムに向いている) プライベートチェーンがパブリックチェーン(NEM)と紐づいていること。 プライベートチェーンでありながらHyperledger Fabricと異なる点として、パブリックチェーンとの互換性が挙げられます。信用性の担保と承認の速さから、人口の多い中国やインドで注目されています。 ただし現時点ではLuxtagのプライベートチェーン内の具体的なアルゴリズムが公開されていません。 結論 今回は学位および能力証明に焦点を当ててプロジェクトを絞り、比較しました。コンソーシアム型ブロックチェーンは、チェーンに記録するデータの高速な承認プロセスや、カスタマイズの面では優れている一方、あくまでも「特定のメンバーで承認する」ということが前提となっている中央集権的な技術です。よって、証明書への信頼性や不特定多数への共有のしやすさという点では、パブリックチェーンかつ社会実装済みであるBlockcertsが、現在のデジタルクレデンシャルプラットフォームの中で特に可用性に優れているといえます。 参考URL E-Scroll Malaysia – Interoperable Trusted Educational Certificates https://e-scroll.my/ 微信公众号 中钞区块链技术研究院https://mp.weixin.qq.com/s/7Z5lX1bnFJ1KVmPUYtOM7A 平成30年度産業技術調査事業報告書https://www.meti.go.jp/press/2019/04/20190423002/20190423001-1.pdf All … Read More

LasTrustがデジタルクレデンシャルを扱う理由

LasTrust(ラストラスト)は、ブロックチェーン証明SaaS「CloudCerts」と、クレデンシャルの管理ウォレット「Skill Wallet」の2つのプロダクトを提供するデジタルクレデンシャル専業のスタートアップです。 (デジタルクレデンシャルとは、修了証書、学習履歴、有資格証、社員証、人事評価、各プラットフォームでのレビュー評価など、ヒト・モノの社会的評価や属性を担保するデジタルデータのことです。) LasTrustがなぜ、デジタルクレデンシャル事業を提供しているのか。私達のビジョン、創業時のエピソードを共有します。 「個人の見えざる価値を可視化する」 LasTrustは「個人の見えざる価値を可視化する」というビジョンのもと、個人が持つ多面的な実績・技術をデジタル化し、オープンなブロックチェーンに記録することで、個人の社会的資産として生涯利用できるようにしよう、という取り組みを進めています。 LasTrustが扱うデジタルクレデンシャルとは、 学習履歴(授業単位の細かいものから修了証明などの大きなものまで) 組織に属していることの証明(社員証や会員カード) 個人から個人、組織から個人への評価、感謝の気持ちやお墨付き 有資格証 等です。現在、これらの情報は主に紙で管理されているため、実は信頼に足る実績が「見えづらい」状況にあります。 図にすると以下のイメージです。 Aさん、Bさん、Cさんの表向きの学歴だけに着目すれば、一般的にはAさんが有利です。しかし、人は可視化されたものだけではない、多面的な価値を持っているものです。よって、Bさん・Cさんのように、表面化されていないが優れた実績があるというケースは多々あります。   このように、私達はプライベートでもビジネスでも、赤枠で囲われた「見えざる価値」を深く知る術を持ちません。 全てのスキルや実績が可視化できていない現状では、その人本来の魅力が伝わり切っていないディスコミュニケーションな領域が発生しているのです。 こういった認知のロスをなくし、個人の価値を正しく可視化することが、デジタルクレデンシャルの役割の一つです。 当社ではブロックチェーン証明SaaS「CloudCerts」でデジタルクレデンシャルを提供しています。 LasTrustがデジタルクレデンシャルに込める想い LasTrustがなぜ、デジタルクレデンシャルを手がけるのか、その理由をお伝えするために創業者3人のバックグラウンドについて軽く触れたいと思います。 CEO・圷 圷(あくつ)は、多摩美術大学を卒業後、20代中盤で動画マーケティングの事業会社を海外(タイ)で起業し、0→1を経験しました。現在7年の経営経験があります。その仕事柄、「価値がありながら社会的知名度を得ていないサービスや人に、クリエイティブの力でスポットを当てたい」という想いがあり、新しいテクノロジーについて勉強したり、個人的に投資をしたりしていました。そんな圷が、本気で「スケールさせたい」、「世に出したい。出さねばならない」と思ったのが、現在のCTO、COOとの出会いで生まれた “デジタルクレデンシャルで個人の価値を可視化する” という考え方です。 CTO・髙橋 髙橋はNTTデータ出身のエンジニアで、元教員というバックグラウンドを持つ技術者です。髙橋が高校教員だった頃、彼は学校教育の評価制度に課題を感じていました。学校での評価は人間的な価値を表すモノサシではないにも関わらず、その評価に強く影響を受け自己評価を下げてしまう生徒がいたそうです。(例:コミュニケーション能力が高くても、成績には反映されない) そういったテストでは測れない定性的な生徒の能力を正しく評価し、伸ばしていくためにはどうずればいいか。髙橋がたどり着いた結論は、「テクノロジーの力で、学校の外からイノベーションを起こし、変えていくこと」ことでした。 K Kは、教育関連企業に勤める東京のエンジニアで、紙の証明書発行システムを業務で手掛けていましたが、デジタル化が進む現代、「紙の」証明書の存在意義について考えていました。アナログな紙を発行するためにデジタルを駆使する矛盾、「もっと技術的なイノベーションが起こせるのではないか」という葛藤。ビジネススクールでMBAを取得するなど、起業家マインドを持つエンジニアであるKは、旧態依然とした組織の中でジレンマを抱えていました。 創業者3人の出会いはハッカソン 住む場所もバックグラウンドも違う我々創業者が出会ったのは、2019年2月に行われた経産省主催「ブロックチェーンハッカソン2019」でした。参加の目的は、圷はデジタルクレデンシャルの市場調査に、髙橋は自身のアイデアを形にするため、Kはブロックチェーン技術を持つエンジニアと出会い、アナログなクレデンシャルをアップデートするヒントを得るため。それぞれ目的は違えど、パッションの方向性は共通していました。 私達はチームビルディングの日に初めて出会い、意気投合してチームを組み、海外のエンジニアを含めた4名のチームでプロダクトを発表。賞を2つ頂く成果を残しました。 「社会実装が非常に近い。頑張ってほしい」という審査員の言葉を、私達は今でも鮮明に覚えています。 ハッカソン受賞後に起業 そのハッカソンで行われた基調講演、ワークショップ、参加者チームのピッチを通して、デジタルIDとそれに紐づくクレデンシャルのエコシステムはまだまだ実験段階ではあるものの、私達は、日本でもデジタルクレデンシャルの市場が勃興していくことに確信を持ちました。そして、その新興市場へトライできる、かけがえのないメンバーに出会えたことも。 半年後の2019年8月、我々は様々な難題と取り組みながら、日本でおそらく史上初となる、デジタルクレデンシャル専業のスタートアップ「LasTrust(ラストラスト)」を創業しました。 本記事で、LasTrustがデジタルクレデンシャルを手掛ける理由を、少しご理解いただけたかと思います。 我々は実現したい世界観があります。 「個人の見えざる価値が可視化」された社会では、今よりももっと、自分らしく生きられる場所を見つけてもらえるはず。 そんなビジョンを創業者はもちろん、エンジニアチーム、セールスチーム、バックオフィス、インターンに至るまで共有し、今日もせっせと様々なブロックチェーン証明書を発行しています。 クレデンシャルは手段に過ぎませんが、ブロックチェーン技術で担保された証明書とデジタルバッジをベストプラクティスとして、自信をもって今後も提供していきます。 ご興味のある方はぜひお気軽にお声がけください。 以上、デジタルクレデンシャルのLasTrustでした。

DIDとは?Web3.0におけるデジタル分散型IDについて

Web3.0とDIDとは Web3.0は、ユーザが自分自身のデータ・個人情報を主権的にコントロールできるインターネットの実現を目指すムーブメントです。 現在のWeb2.0のパラダイムでは、GAFAのような中央集権型のデータ管理、デジタルID管理に依存していますが、そういった中央の一点に集中したパワーバランスと対照的に、各ユーザ個人に主権を移し、分散型のネットワークやサービスの構築を目指す考え方です。 Web2.0が抱える中央集権的構造の課題 中央集権的なデータ管理は、管理権限が一点に集中しているため、そこを狙ったサイバー攻撃、情報漏洩など、セキュリティに関して構造的課題があります。 実際に、Facebookから2,900万人分の個人情報漏洩や、Google+で約5,250万人分の個人情報漏洩の懸念、といった事案が過去にありました。 中央集権型のあらゆるシステムは、クラッカーにとっては「絞られた的」であり、そもそも攻撃されやすい構造になっています。 次世代のデジタルID「DID」 本稿で取り上げるDID(Decentralized Identifier)とは、Web3.0の世界を実現するために開発された、分散型のIDです。 特定の企業によるIDの管理主体が存在しないため、Web2.0の課題点である 単一障害点による不正アクセスのリスク 特定の企業によるユーザのプライバシー情報の一元管理 の解決に繋がる次世代のデジタルIDです。 DIDが開発された背景(SSIとVerifiable Credentials) 前節に加え、DIDが開発された経緯について触れます。 DIDを語る上で欠かせないのがSSI(Self Sovereign Identity)という概念です。これはW3C(Https、HTML、CSS等、現在のインターネットを構成するプロトコルの標準化団体)が提唱する考え方で、「管理主体が介在することなく、自分自身が自らのデジタルアイデンティティを保有、コントロールできる」ことを志向しています。 このSSIを実現するために、DIDとVerifiable Credentialsが開発されました。 SSIとVerifiable Credentialsについてはそれぞれ詳しい記事がありますので、こちらも是非ご覧ください。 「Self Sovereign Identity(SSI)」とは?SSIが実現できること 「Verifiable Credentials」とは?W3Cが推進する自己主権型のデジタル個人情報 DID(Decentralized Identifier)の基本構造 DIDとは情報にアクセスするための文字列でURI(名前やインターネット上の場所を識別する文字列の書き方のルールの総称。”場所”の書式がURL)の一種です。URLと同様にリンクがあり、アクセスすることでDIDにリンクされた情報を閲覧できます。 DIDの場合の、リンクされた情報とは「DID Document」です。 DID Documentの中身は以下のようなものです(Decentralized Identifier – W3Cより)。 この情報は中央集権的に管理されたデータではなく、分散管理が可能なアーキテクチャになっています。具体的にはブロックチェーン技術が利用されており、Web2.0時代の課題であった情報漏洩やプライバシーの侵害を未然に防ぐことができます。 これまで、セキュリティに関するソリューションは主にソフトウェアでしたが、DIDではそういった対症療法ではなく、インターネットの基本構造自体がアップデートされる点に注視すべきと考えます。 デジタルクレデンシャル専業の当社としても最新の動向をキャッチアップしています。 DIDを使用したデジタル世界でのアイデンティティの確立 実は、DID自体には個人を証明するための重要な情報は存在しないため、あまり役に立ちません。暗号技術によって個人情報を格納した、Verifiable CredentialにDIDを付与することでオンライン上でも信頼性のあるアイデンティティを確立することができます。 大まかな流れは以下のようになります。 発行者が発行者のDIDと保有者のDIDをVerifiable Credentialに付与し、レジストリに保存し、発行します 保有者は、Verifiable Credentialを取得し、スマホなどの管理アプリで保存・管理します 検証者は、ユーザ(保有者)にVerifiable Credentialの提示を要求し、レジストリの情報を元に検証します Verifiable Credential準拠のブロックチェーン証明書 今後、SSIのコンセプトのもと、ブロックチェーン技術を用いた非中央集権的なサービスが次々と社会実装されていくと予想できます。 当社でも、ブロックチェーン証明SaaS「CloudCerts®」を用い、Verifiable Credential準拠のブロックチェーン証明書の発行を2020年夏に予定しています。 Web3.0、ブロックチェーン証明書の発行についてご興味のある事業者様はお気軽にご相談ください。

Self Sovereign Identity(SSI)とは?SSIが実現できること

Self Sovereign Identity(自己主権型アイデンティティ)とは Self Sovereign Identity(SSI)とは、管理主体が介在することなく、自分自身が自らのデジタルアイデンティティを保有、コントロールできることを目指す考え方、概念です。 Self Sovereign Identityは日本語で「自己主権型アイデンティティ」と表されます。 管理主体が介在することがない世界を目指しているということは、現在は管理主体が存在するということです。 例としてGoogleやAmazonのアカウントなどの、各社がそれぞれ提供しているアイデンティティが挙げられます。このようなシステムである限り、ユーザーは管理主体(会社)ごとに手続きをし、膨大な数のアカウントを保持しなければなりません。 そこで、アイデンティティを特定の中央集権的な機関に委ねるのではなく、ユーザー自身が保有・コントロールできる次世代のインターネットを実現するためにSSIが提唱されたのです。 管理主体が介在することの問題点 そもそも、なぜ管理主体が介在することが問題なのかについてご説明します。 一つ目は、先述の通り、サービス毎に個別のアカウントを作るため、結果的に膨大な数のアカウントを保有・管理する必要がある点です。これによって、「普段めったに使わないサービスのログインパスワードを紛失してしまった」というような弊害が生じます。 (後述しますが、SSIの概念では、ユーザー自身が管理するアカウントであらゆるサービスのログインを可能にするアーキテクチャが構想されています) 二つ目は、アカウントの管理主体がサービスを停止した場合のリスクが大きい点です。例えば、今までGoogleアカウントを使用して利用していたサービスがそのアカウントで使えなくなります。 三つ目は、個人情報の漏洩リスクを管理主体に依存している点です。2018年にはfacebookで2900万人のユーザーの個人情報が漏洩したと報じられましたし、Google+でも約5250万人分の個人情報に流出の恐れがあったと米国グーグルが発表しています。現代社会を席巻する巨大IT企業でもセキュリティは完璧ではなく、預けている自分の情報の管理はサービス提供者に完全に依存しています。 このように、管理主体が存在する中央集権型システムの問題点はいくつか存在します。 Self Sovereign Identity(SSI)を導入することのメリット 大きなメリットは、デジタル世界でも、現実世界のように自分であることを証明できる点です。SSIは、アイデンティティを一括管理する管理主体が存在することなく、自分自身で自らのアイデンティティを管理するという自己主権的な考えが根底にあります。 オフラインにおける自己の証明 オフラインでお酒を買う場合、飲酒可能年齢に達していることの証明を求められたら、身分証(運転免許証など)などを提示してお酒を買えます。その身分証の「正しさ」が公に認められているからです。運転免許証のような公的証明を提示すれば、コンビニ毎に身分証を作成する必要はありません。 オンラインにおける自己の証明(現在) 当たり前のように聞こえますが、顔の見えないオンラインでは単一のクレデンシャルで複数のサービスを利用するために複雑な仕組みが必要です。 現在は「SSO(シングルサインオン)」、「OpenID」などの方式が一般的です。例えばNewsPicksというメディアではfacebookのアカウントを利用して新規アカウントを作成できますが、これはfacebookのOpenIDをNewsPicksが利用しているためです。 オンラインにおける新たな自己の証明(SSI) このように、一つの自分を証明するためのアイデンティティを所有していれば、様々な場面で自分を証明することができますが、SSO、OpenIDは構造的に「単一障害点」を抱えています。 つまり先程のNewsPicksの例では、facebookのアカウントを乗っ取られていた場合、勝手に新規アカウントの登録・抹消ができてしまいますし、その他facebookのOpenIDでログインできるサービス全てがリスクに晒されます。 SSI下では、こういった単一障害点をクリアできるアーキテクチャが提唱されています。 アイデンティティとは ここで、これまで出てきた、アイデンティティという用語と、これから出てくるIdentifierという用語の違いについてご説明します。 まず、Identifierは日本語で識別子と訳されます。Wikipediaの文章をみてみると、以下のように示されています。 ある実体の集合の中で、特定の元を他の元から曖昧さ無く区別することを可能とする、その実体に関連する属性の集合のこと[1]をいう。 識別子 – Wikipedia 簡単にいえば、一意に区別できる値のことです。 次に、アイデンティティとは さまざまな立場における自分自身の在り方について、「これがほかならぬ自分なのだ」というまとまりをもった確信のことである。 アイデンティティ – Wikipedia つまり、識別子やその他の属性の組み合わせによって、それが一意であると証明できるものです。例えば、「証明書」もアイデンティティの一つといえます。 Self Sovereign Identity(SSI)を実現する仕組み(Verifiable Credentials/DID) SSIはVerifiable CredentialsとDID(Decentralized Identity:分散型アイデンティティ)の組み合わせによって実現することができます。 もう一度SSIについて復習すると、管理主体が介在することなく、自分自身が自らのデジタルアイデンティティを保有、コントロールできることを目指す考え方、思想でした。 では、DIDは何かというと、デジタルアイデンティティを個人で管理できるようにするための、分散型の識別子です。具体的には、GoogleIDなどを識別子と捉えることができ、それを中央集権型に管理するのではなく、分散型で管理するということです。 全体像を簡単に説明すると、 発行元がDIDが組み込まれたVerifiable Credentialsを発行(ブロックチェーンに保存) ユーザーはDIDが組み込まれたVerifiable Credentialsを管理できるアプリで管理する ブロックチェーンの情報を元に、情報が正しいか検証する DIDとVerifiable Credentialsについては、それぞれ詳しい記事がありますので、ご興味のある方は御覧ください。 Verifiable Credentialsについての詳しい記事はこちら(「Verifiable Credentials」とは?W3Cが推進する自己主権型のデジタル個人情報) DIDについての詳しい記事はこちら(DIDとは?Web3.0におけるデジタル分散型IDについて) Verifiable Credential準拠のブロックチェーン証明書 今後、SSIのコンセプトのもと、ブロックチェーン技術を用いた非中央集権的なサービスが次々と社会実装されていくと予想できます。 当社でも、ブロックチェーン証明SaaS「CloudCerts®」を用い、Verifiable Credential準拠のブロックチェーン証明書の発行を予定しています。 ブロックチェーン証明書は、スマホに保存・ワンタップでシェアが出来るデジタル証明書です。さらに偽造の可能性を限りなくゼロに近づけることができ、誰でも簡単に真正性の検証ができる機能があります。 詳しくはこちらの記事をご覧ください: ブロックチェーン証明書と紙の証明書の違いとは

「Verifiable Credentials」とは?W3Cが推進する自己主権型のデジタル個人情報

Verifiable Credentialsとは? Verifiable Credentials(読み:ヴェリファイアブル クレデンシャルズ、略:VCs)とは、自己主権型のデジタルな個人情報の集合体を指す、次世代の証明の形です。 デジタルな個人情報とは、年齢、名前、住所だけでなく、 運転免許証 有資格証明書 学位証 賞歴 学習履歴 研修修了証 出生証明書 など、現在私たちが物理的に所有する様々な個人情報を、デジタルに標準化したものです。 Verifiable Credentialsが生まれた経緯 現在、サービスを利用する際に登録する個人情報は、GAFAを始めとするプラットフォーマーやサービス事業者に管理を依存しています。 こういった一部の企業による個人情報の独占的なコントロールはかねてから疑問視され、それはGDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)の取り組みにも現れています。 Verifiable CredentialsとGDPRに直接の関係はありませんが、開発元であるW3Cが提唱するSSI(Self Sovereign Identity)という概念、「個人情報は、第三者の管理主体を介することなく、個人が主権的にコントロールすべきである」というある種のムーブメント的な思想が根底にあり、開発されました。 提唱者であるW3C(World Wide Web Consortium )とは HTML、XML、MathML、DOM等の規格を勧告した非営利の国際標準化団体です。W3CによるVerifiable Credentialsのデータモデルはこちら Verifiable Credentialsのウェブの歴史的意義とユースケース さて、Verifiable Credentialsで一体何が実現するのかご説明します。 オンラインで「個人の信用情報」を実現する仕組み Verifiable Credentialsは「内容の検証がオンラインで可能なデジタル個人情報」です。これにより、現在個人がアナログに管理している不透明な情報の可視化・真偽の疑わしい情報の公正な検証を行え、信頼に足る電子的な個人情報を様々なサービスで利用できます。 例えば、ジョブマッチングサービスなどで相手の学歴がハーバード大学卒と書いてあっても、その情報を書き込んだのが相手本人の場合、信憑性に欠けます。虚偽かもしれませんし、「少しの間公開授業に出ていた」レベルかもしれません。 しかし、その情報がハーバード大学と紐付いていることを即時に検証できる仕組みがあれば、安心してスムーズな人材採用を行えます。 Verifiable Credentialsのアーキテクチャはそういった目に見えない「事実」を、確かさが担保されたデジタルクレデンシャルとして発行・管理・シェアできるよう設計されています。(技術的な仕組みは後述します) これは特定のアプリケーションのみで実現するものではなく、HTMLやCSSと同じような共通規格です。これが一般化すれば、インターネットの中に、個人情報を安全に送受信できる仕組みが組み込まれるようになります。 Web3.0におけるVerifiable Credentialsの役割 次世代のインターネットプロトコルとして開発されたVerifiable Credentialsは、今後OSや端末に関わらずあらゆる機器やサービスに利用されると考えられますが、ブロックチェーン技術を利用した非中央集権的ウェブアプリケーション「DApps」との連携でさらにVerifiable Credentialsの真価が発揮されるでしょう。 W3Cの掲げる「個人主権」は「非中央集権」を別の角度から言い換えた言葉であり、ブロックチェーン、DApps、SSI、Verifiable Credentials、DID(後述)に共通するのは一貫して「Decentralized(非中央集権)」というコンセプトへのパラダイムシフトです。 そして現在の中央集権的ウェブ「Web2.0」に、上記の非中央集権的仕組みが、プロトコルレイヤーからアプリケーションレイヤーまで浸透した時に実現される次世代のウェブが「Web3.0」です。 Verifiable Credentialsの仕組み 簡単に、Verifiable Credentialsの技術的な仕組みを説明します。 (冒頭の説明の通りVerifiable Credentialsはクレデンシャルの”集合体”であるため、今回の一つのクレデンシャル発行の例では「Verifiable Credential」と表記します) Verifiable Credentialを語る上での登場人物は 発行者 保有者 検証者 そしてレジストリです。 クレデンシャルには紙、デジタルを問わず必ず発行者が存在します。 卒業証明書の発行者→教育機関 運転免許証の発行者→各都道府県の公安委員会 社員研修修了証の発行者→研修プログラムを提供した企業 という具合です。これら発行者がVerifiable Credential準拠のクレデンシャルを発行できるプラットフォーム(後述するBlockcertsのような)を用い、デジタルクレデンシャルを公式な証明書として発行します。 次に、受取人(図では保有者)が自身のレジストリに発行者から受け取ったVerifiable Credentialを保管し、用途に応じて利用します。 例えば、特定の資格の保有者でないと応募できない求人、あるいはサービスへのログイン、IoTデバイスのオーナーページへのアクセスなどあらゆるケースが想定されます。 検証者は、受取人から送信されたVerifiable Credentialを検証し、サービスの提供の可否を判断する、クレデンシャルの種類によって提供プランを変更する、といったことができます。 DIDとVerifiable Credentialsについて Verifiable Credentialsの発行にはDID(Decentralized Identifier:個人主権型のデジタルアイデンティティ)が組み込まれていることが望ましく、Verifiable CredentialsとDIDの組み合わせによってSSIを達成できます。 (DIDの詳細についてはこちらの記事を御覧ください。)     Verifiable Credentials準拠予定のデジタル個人情報「Blockcerts」 ここまでの説明で、Verifiable Credentialsの普及は「まだまだ遠い未来の話」と感じられた方も多いかと思います。 実際、Verifiable Credentialsを利用したサービスの運用例は2020年現在、事例がありません。しかし本年、あるブロックチェーン証明書のオープンスタンダード規格がVerifiable Credentialsへ準拠する予定です。 それが、当社が発行するブロックチェーン証明書も準拠している「Blockcerts」です。 教育機関の学位証、スタディログのブロックチェーン証明書を発行できる「Blockcerts」 Blockcertsは、ブロックチェーン証明書発行のための世界標準規格であり、この規格を利用し、MIT、ハーバード大学、マルタ共和国、日本ではビジネス・ブレークスルー社の大前経営塾がブロックチェーン証明書を提供しています。(手前味噌ながら、大前経営塾へは当社のCloudCertsから発行し、提供しました。詳細はこちら) このように、Verifiable Credentials準拠(する予定)のブロックチェーン証明書は既に実社会で利用可能です。(Blockcertsの詳しい説明はこちらの記事を御覧ください。) Blockcertsは教育機関向けに開発されたものですが、 地方自治体が発行する証書 社員証 名刺 財務諸表(要カスタマイズ) 商標 在留カード 保証書 などのデジタル化にも利用できます。 本記事の末尾に、CloudCertsから発行したブロックチェーン証明書のサンプル原本を埋め込みました。”Verify again”を押すとブロックチェーンへの検証プロセスを使用できるので、ぜひ体験してみてください。 このように、Blockcertsは発行された証明書の有効性を誰もが簡単に検証できる機能もあるため、従来用いられていた紙の書類や証明書を、発行者公認のデジタル証書として残せます。 そして、その証明書はVerifiable … Read More

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?デジタライゼーションとの違いについて

本記事では、コロナ禍以降、日本社会のトレンドにもなった「デジタルトランスフォーメーション(DX)」について、デジタライゼーションとの違いも踏まえながら、わかりやすく説明していきます。 デジタルトランスフォーメーション(DX)とは? デジタルトランスフォーメーション( Digital Transformation、略:DX)は、直訳では「デジタル化」という意味ですが、実際は「デジタル化による革命」といった意味合いに近く、次のように2つの意味があります。 ①「新しいテクノロジーが社会に浸透し、人々の暮らしがより良いものへと革新していく」 デジタルトランスフォーメーションは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念です。 彼は、その概念を「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義しました。この定義によると「革命」という意味合いは込められていませんが、時が進むにつれてデジタルトランスフォーメーションが再定義されていき、現在の意味になっています。 ②「新しいデジタル技術によって創られ、私達の現在の生活やビジネスなどのモデルを一新させるもの」 前項で、デジタルトランスフォーメーションには単なる「デジタル化」ではなく「デジタル化による革命」という意味が強く含まれていることを説明しました。 この「革命」が示すのは、社会や人々の生活をより良くするために、既存のシステムやモデルを一新させて新しい分野を創り出すということです。ネガティブに見る必要は全くなく、むしろ新しく便利になる生活を想起させるポジティブな概念です。 このように、デジタルトランスフォーメーションは社会や暮らしをより良くするための「デジタル革命」なのです。 デジタライゼーションとは? 対して、デジタライゼーション(Digitalization)はどういう意味でしょうか? デジタライゼーションも直訳すると「デジタル化」という意味です。しかし、デジタルトランスフォーメーションと異なる点は「デジタル化による進化」という意味合いを強く含んでいることです。 つまり、デジタライゼーションとは「新しいテクノロジーによって、すでに存在しているモノやシステムをアップデートすること」です。 この意味はデジタルトランスフォーメーションと非常に似ています。しかし、デジタルトランスフォーメーションが「革命」という広義でのデジタル化なのに対して、デジタライゼーションが「進化」という狭義でのデジタル化を指すという点で、両者には大きな違いがあります。お互いに似た意味を持つ言葉ですが、指している意味の範囲が異なるということです。 次の章でもう少し詳しく両者の違いを見ていきましょう。 デジタルトランスフォーメーションとデジタライゼーションの違い デジタルトランスフォーメーションは「デジタル化による革命」、デジタライゼーションは、「デジタル化による進化」という意味合いを強く含んでいました。ただ、これだけだとまだはっきりと違いがイメージできないと思いますので、これからは両者の関係性について見ていきましょう。 デジタルトランスフォーメーションとデジタライゼーションの関係性 わかりやすく言うと、デジタルトランスフォーメーションとデジタライゼーションは、因果関係にあります。デジタライゼーションという「原因」に対して、デジタルトランスフォーメーションという「結果」があるイメージです。 では、具体的に2007年にAppleから初めてスマホが発売されたケースを例にして見てみましょう。 Appleは、当時のPCや携帯電話を新しく進化させ、iPhoneというスマホを作り世界に衝撃を与えました。当初のiPhoneはあまり使い物になりませんでしたが、次々にiPhoneは進化していき、現在ではスマホは我々の暮らしに必要不可欠なものへとなっています。結果的には、携帯電話は淘汰されましたが、人々の暮らしはより便利なものへと一変し、さらにはソーシャルゲームやSNSなどのスマホアプリという新しい分野、仕組みが新たに創り出されています。 この実例で見たとき、PCや携帯電話をスマホに進化させるという行為が「原因」であり、「デジタライゼーション」です。その「結果」として、人々の暮らしにスマホが浸透し、SNSが普及したことで広告収益モデルに大変革をもたらしました。こうした全体の「結果」を「デジタルトランスフォーメーション」と呼ぶことができます。 具体的なデジタルトランスフォーメーション メジャーなデジタルトランスフォーメーションは、次のような AI (人口知能) 5G (第5世代移動通信システム) クラウド (いつでもどこでもデータの利用、保存、共有化を実現) ブロックチェーン (分散型ネットワーク) ロボット IoT (物がインターネットに繋がる仕組み) などのテクノロジーを利用した取り組みです。これらを活用すると、 従来は人間が行っていた自動車の運転も、AIによる映像解析により自動運転が可能に。ヒューマンエラーによる事故の防止に繋がる VR/ARによって、仮想空間・仮想現実という今まで活用されていなかった空間レイヤーを用いた、新たなエンターテイメントのサービスが生まれる 機械学習によってこなせる単純作業をAIやロボットが担当し、人間は人間にしかできない創造性のある作業に集中できる といったデジタルトランスフォーメーションになるのです。これらは未だ実現されていないものの、世界中の至るところで日々研究がなされています。 →デジタルトランスフォーメーションの実例について知りたい方はこちら「コロナ禍におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)まとめ」 なぜ、デジタルトランスフォーメーションはメガトレンドなのか 2010年代はインターネット革命時代の成熟期でした。テクノロジーの発展によりインターネットが急速に普及し、アメリカの5つの巨大IT企業(Google・Amazon・Facebook・Apple・Microsoft)が世界の市場を独占しました。 その次の時代を創ると言われているのが、「デジタルトランスフォーメーション」の概念です。 実はインターネット革命時代から見れば、PCやスマホなどの活用事例もデジタルトランスフォーメーションだったと言えます。PCはインターネットの土台を作り上げ、スマホは、 そのインターネットを私達の生活に浸透させました。 そして2020年代、完備されたインターネットを土台とした前述のようなテクノロジーの社会実装によって、これまで以上のスピードで様々なデジタルトランスフォーメーションが実現されていきます。 例えば、先に見たように有名なデジタルトランスフォーメーションとして挙げられるのが、「AI・IoT・クラウド・ブロックチェーン」を活用していくものです。これらは、きたるべき5G時代の「4種の神器」とも呼ばれており、次のメガトレンドとして注目されています。 特にAmazonは、すでに「AWS」というクラウドサービスを構築するためのプラットフォームを提供しています。このサービスはすでに日本の半数以上の企業が利用しており、クラウドの仕組みを持ったサービスを構築する際、Google Cloud Platform (GCP)と並び、不可欠なツールになっています。 Amazonと聞くとECサイトをイメージされる方が多いかもしれませんが、総売上のうちAmazonのオンラインストア事業の収益比率は50%、AWSは12.5%と、大きな収益の柱になっています。また業績推移も他事業に比べて大きいことから、クラウドを自社で構築したいというニーズの高まりを伺い知れます。 インターネットが普及した現代では、ネットと無関係のビジネスを探すほうが難しい状況ですが、社会全体がデジタルトランスフォーメーションの渦中にあるなか、自社のサービスをアップデートしていくためには前述した様々なテクノロジーの特徴を捉え、適切に利用していく知見が求められています。  

ブロックチェーン証明書発行OSS「Blockcerts」とLearning Machine社の最新レポート

LasTrust(以下ラスト)は、MITのMedia LabとLearning Machine社が共同開発したOSS(オープンソースソフトウェア)である「Blockcerts(ブロックサーツ)」を活用し、ブロックチェーン証明書発行システム「CloudCerts®」を開発しました。  今回の記事では、Blockcertsがどういった規格であるか、そして米Hyland社への吸収合併を発表した、開発元であるLearning Machine社の最新の動向についてまとめます。 この記事は、同社の開発担当上級副社長ナタリー・スモレンスキー氏が来日した際の会食、同社のエンジニアチームとのオンラインミーティングで伺った内容をもとに執筆しました。 Blockcertsとは? BlockcertsはLearning Machine社とMITのMedia Labで2016年に共同開発が行われ、ブロックチェーン証明書発行のコアとなるOSS(MITライセンスで商用利用も可)が提供されています。 https://github.com/blockchain-certificates ブロックチェーン証明書発行事業者は、このオープンソースを軸に、様々な仕様のブロックチェーン証明書発行システムを構築できます。 ラストもこのOSSを使用し、「CloudCerts®」を独自に開発しました。 Blockcertsに関する詳しい記事はこちらを御覧ください。     OSSを活用する理由 ブロックチェーン技術を利用したあらゆるサービスは、非中央集権的なガバナンスを実現するため、その内部動作の透明性を担保しています。 ブロックチェーン証明書も同様ですが、加えて様々なユーザー間で送受信が可能なプラットフォームが必要になります。 そういった背景を鑑み、ラストは現在のブロックチェーン証明書発行のデファクトスタンダードであるBlockcertsを発行システムのコアに採用しました。 そして、マーケットのニーズに応じたカスタマイズを独自に行い、「CloudCerts」を開発。デジタルIDの取り扱いの新規性を軸に特許出願を行いました。   Learning Machine社とW3C、IMS Globalの関係性について 2020年1月、日本IMS協会「デジタルバッジ関連標準国内導入検討部会」が開催した「新春デジタルクレデンシャル最新動向セミナー」に、ゲストとしてLearning Machine社(以下LM社)から開発担当上級副社長ナタリー・スモレンスキー氏が招かれ、講演が行われました。 デジタルバッジ関連標準国内導入検討部会のメンバーであるラストも参加し、 食事会にてナタリー氏にLM社とW3C、IMS Globalとの関係性について質問しました。 ラストがLM社の動向に興味を持つ理由は2つあります。 第一に、Blockcertsが、W3Cが推進しているWeb3.0対応規格である「Verifiable Credential(ベリファイアブル・クレデンシャル)」に準拠する可能性が高いこと。 (Verifiable Credentialとは何か、別の記事で特集しますので、Web3.0におけるデジタルクレデンシャルについて興味のある方はぜひ御覧ください。) 第二に、Blockcertsが開かれた開発コミュニティでありながらも、依然としてLM社が中心となって開発が行われているため、Blockcertsをコアシステムに採用しているラストとしては、Blockcertsがどの方向に進むのか、いち早く把握しておく必要があるためです。 Blockcertsは当初、OpenBadgesへの準拠を進めていた Blockcertsコミュニティでは、2つの異なる規格との互換性が議論されていました。 IMS Globalが推進する「OpenBadges」と、W3Cが推進する「Verifiable Credential」です。 Blockcertsの初期開発チームから参加しているKim Hamilton Duffy氏は、W3Cのデジタルクレデンシャルを推進するコミュニティ「Credentials Community Group」で共同議長を務める傍ら、IMS Globalとも積極的にデジタルクレデンシャルの在り方を議論していました。 IMS Globalは10年以上の歴史を持つデジタルバッジの標準規格、OpenBadgesを推進しています。 OpenBadges自体はブロックチェーンに関連するものではないため、Blockcertsは当初、本規格のブロックチェーン拡張としての位置づけを目指し、改良を重ねていました。 (実際にBlockcertsのソースコードにはOpenBadgesに関係する箇所が見受けられる)しかし、はっきりとした要因は不明ですがOpenBadgesへの対応は見送りとなります。 (当社の研究では、BlockcertsがOpenBadgesに準拠するためにはOpenBadges側のバリデータの仕様を更新する必要があり、そこが障壁になったのではないか、と考えています) BlockcertsはVerifiable Credential準拠へ その後、BlockcertsはW3Cが制定を進めるWeb3.0の自己主権型個人情報プロトコル「Verifiable Credential」への準拠を目指し、舵を切り直していきます。 備考:Verifiable Credentialは、W3Cが提唱するコンセプト、SSI(Self-Sovereign Identity)の考え方に従って生まれた様々な個人情報を束ねるための標準規格。DID(Decentralized Identifiers)と組み合わせることで、現在の企業依存の個人情報管理から個人が主権的に自分の個人情報を開示することが可能になる。 当社がLearning Machine社のエンジニアとのオンラインミーティングを持った際、彼らから伺った開発のマイルストーンによれば、Blockcertsは2020年夏にVerifiable Credentialへの準拠完了を予定しているとのことでした。 我々はLM社の開発スピードに驚きつつ、日本で唯一デジタルクレデンシャルを専業領域として取り組むスタートアップとして非常に嬉しくもあり、称賛の言葉を贈りました。 (本ミーティングは新型コロナウィルスが世界的に流行する前に行われたため、現在はスケジュールが変更されている可能性があります) Learning Machine社がHyland社へジョイン。 Learning Machine社は、高等教育、ヘルスケア、金融サービス、保険、政府向けのコンテンツプラットフォームの大手プロバイダーであるHyland社の一部となり、「Hyland Credentials」として今後活動していくと発表されました。 ハイランドソフトウェア(英: Hyland Software, Inc.)は、OnBaseと呼ばれるエンタープライズコンテンツ管理(ECM)とプロセス管理ソフトウェアスイートの開発会社である。 Wikipediaより ラストも、米国高等教育機関向けシステムの導入実績を重ねてきた同社と「Hyland Credentials」のシナジーに注目しています。 ブロックチェーン証明書を含むデジタルクレデンシャルはどこに向かっているのか 欧米では、資格や学位等の「クレデンシャル」が人材市場において日本よりも大きな意味を持っています。 特定の資格を保持していないと就けないポジションや職種が数多く存在し、その一つ一つのクレデンシャルの価値を相対的に測る指標も存在します。 また、特にEUでは異なる国同士で人材の行き来があり、各個人のスキルを定量的に評価する指標が必要だった、という地政学的背景もあります。 さらに現代社会はアフターコロナへの時代へとパラダイムシフトし、「非接触」「デジタル化」の必要性・重要性と共にデジタルクレデンシャルの普及が日本を含む世界中で始まろうとしています。 手前味噌ですが、ラストはビジネス・ブレークスルー(BBT)社へ、ブロックチェーン証明SaaS「CloudCerts」から日本初となるブロックチェーン修了証明書を提供しました。 BBT社のプレスリリースから一部引用します。 受講生の修了履歴がブロックチェーンに記録されるため、修了生の修了実績や能力の情報が所属企業の人事部等に共有可能となり、将来的に修了生のキャリアパスの最適化が期待できるため、大前経営塾では導入を決定いたしました。今後、BBTのその他のプログラムへの展開も検討しています。 ブロックチェーン証明書は、ブロックチェーンに学びのログ(スタディログ)、あるいは学位を記録することで、その学習者の実績を半永久的に改ざん不可能な形で担保できます。 「公的なお墨付きが付いたポートフォリオ」として活用することで、特にジョブマッチングへの効果を期待できるのです。 これは「学習の出口戦略」とも言え、教育機関には卒業生の活躍の場が増えることでのブランディング面でのメリット、学習者にとっては学ぶことの動機づけに直結すると考えています。 このように、デジタルクレデンシャルの普及とあらゆる事業領域のデジタル化はリンクしている事象であり、来るWeb3.0の潮流と同じ方向を向いています。 ラストは今後も、この領域で研究と開発・マーケティングを進め、単なる「紙の証明書のデジタル化」では終わらない、むしろそこから始まる新たな価値創造、デジタルトランスフォーメーションを進めていきます。

コロナ禍におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)まとめ

新型コロナウイルスの影響によって、今後はビジネスやテクロノジーのトレンドが大きく変わると予想されています。その中でも特に注目されているのが 「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。 DXは、従来のビジネスの商習慣を一変させる可能性を秘めています。 本記事では、コロナ禍におけるDXの最新動向をまとめて解説していきます。 DXとは DXとは、デジタルトランスフォーメーション( Digital Transformation )の略で、主な意味は次の2つです。 新しいテクノロジーによって、人間の生活やビジネスなどにさらなる効率化や利便性をもたらすこと 既存の価値観や枠組みを根底から覆すほどのデジタルイノベーションをもたらすもの このようにDXには、概念としての意味と、物としての意味があります。DXを社会に浸透させることができれば、人々の生活はより良いものへと変わっていくでしょう。 なお「デジタルトランスフォーメーション」は、単なる「デジタル化(デジタライゼーション)」とどう違うのかについては、こちらの記事でまとめています。 DXの具体例と活用例 具体的にはどんなDXがあるのでしょうか?以下にメジャーなDXをまとめてみました。 AI (人口知能) 5G (第5世代移動通信システム) クラウド (いつでもどこでもデータの利用・保存・共有化を実現) ブロックチェーン (分散型ネットワークでデータの確かさを誰でも簡単に確認・証明できる) ロボット IoT (物がインターネットに繋がる仕組み) これらが旧来のビジネスを大きく変えていくと考えられているDXです。 技術的な専門用語が多いので、私達の社会生活や仕事に関わる具体的なサービスに置き換えてみましょう。 画像認識 (AI) 自動運転 (AI/5G) 遠隔診断/遠隔手術 (5G) VR/AR (5G) リモートワーク/リモート会議  (ICT : 情報通信に関わる技術の総称 ) キャッシュレス (ICT) AWS (クラウドサービス) ビックデータ (クラウド/IoT) 無人コンビニ (5G/AI) 無人倉庫 (5G/AI/ロボット) RPA (ロボット) スマート農業 (IoT/ロボット) スマートシティ (IoT) 暗号通貨 (ブロックチェーン) ペーパーレス、紙の電子化 ( ブロックチェーン ) トークンエコノミー (ブロックチェーン) など、書ききれないほど多様な分野で既に活用されていますが、これらはコロナ禍以前から存在していました。 それがアフターコロナの今、どう変化しているのでしょうか? コロナ禍以降のトレンド 結論として、コロナ禍における今後のトレンドは、「コロナ以前からのデジタル化のトレンドの加速」です。 アナログなコミュニケーションが制限されてしまうコロナの影響によって、あらゆるオンラインサービスの需要が相対的に急伸し、DXはメガトレンドとして社会に浸透していくと考えられています。 実際に、今までリモートワークを疑問視していた企業が、緊急事態宣言や自粛によって導入を決めたり、授業のオンライン化に積極的でなかった学校が、一転して導入を進めたりと、多くの分野でデジタル化が一斉に始まっています。 また、日本・海外を問わず、コロナ・原油の価格暴落をきっかけとしたリーマンショック以来の不況が訪れることが予測されています。その影響によって、多くの企業で業務の無人化や自動化、省コスト化などが急務となることは想像に難くありません。 アフターコロナの時代とDXを活用しようとする企業の動きはセットとして考えられます。 DXのニーズの急伸とアナログなサービスの不調はしばらく続く 今回のコロナ禍によって、DXはニーズが伸びた一方、旧来のアナログなサービスや業種の売上は激減しています。 これは通常何年もかけゆっくりとシフトするトレンドが、2カ月間で急速に変化してしまった例外的なケースと言えます。したがってコロナが完全に収束すれば、そういった業種もある程度回復すると予想できます。 ただし、一度転がり始めたデジタル化への波は強く、「コロナ前の社会へ完全に戻る」とは考えにくい状況です。実際のアンケートでも、「コロナ後もテレワーク中心に働きたい」と答えた方が4割を超えたという結果が出ています。 業種を問わず、あらゆる業務プロセスのデジタル化、オンラインサービスのトレンド、DXのニーズ拡大は長期化していくでしょう。 次の章から、コロナ禍におけるデジタルトランスフォーメーションのサービス事例を紹介していきます。 医療の効率化を図るDX「新型コロナウイルス診断AIシステム 」 現在、新型コロナウイルスにおける世界中の死亡者数は30万人を超え、今もなお、感染者は増え続けています。 そのような世の中で、重要なのは、ワクチン開発だけではなく、新型コロナウイルス診断の効率化です。 実は、この動きは、日本よりも中国において加速しており、すでに世界最大のBtoBトレーディングプラットフォーム「Alibaba」が「新型コロナウイルス診断AIシステム」の開発に成功しています。 このAIは、通常で約15分掛かっていた新型コロナウイルス診断をわずか20秒で完了できるという優れたサービスを提供しています。 さらに、驚くべきことにこのAIの精度は約96%と、非常に高い水準を誇っているのです。 本サービスは既に湖北省、上海、広東省、江蘇省等を中心にすでに実用化されています。診断の待ち時間を減らせるだけでなく、精度も申し分ない診断AIシステムは、画期的なDXの1つと言えます。 今後も、新型コロナウイルス診断だけでなく、多くの病気に対する診断に対して、AIシステムが作られていくことでしょう。 遠距離で不動産を管理できるDX「スマートブッキング」 新型コロナウイルスの状況下では、対面感染のリスクがある以上、不要な外出は避けるべきです。 しかし、仕事の都合上、外出を避けて通れない企業もあります。特に不動産管理会社は、 実際に物件に赴き、管理しなければならない問題を抱えていています。 そこで役に立つのが、「スマートブッキング」という遠距離からスマートロックやスマートエントランスを操作・管理できる入居後の物件管理サービスです。 このサービスにより、・登録・鍵交換といった入居者との手続きをオンライン上で行う・工事業者が一時的に出入りできるようなバーチャルキーの導入といったことが実現可能になります。 また、このほかにも複数権限の設定や共用施設のカレンダー予約・決済機能などがあり、様々なニーズに対応するサービスとなっています。 このようにIoT製品を操作・管理することで、不動産管理会社の業務を効率化することができます。   健康状態を把握できるDX「カロミル」。食事の写真で解析 新型コロナウイルスに感染しないためには、人との接触を減らすだけでなく、健康を維持したり、免疫力を高めたりするための生活習慣を身に付けることが大切です。 その一環として、自分が健康体なのか簡単に判断できる方法があったら便利ですよね。 この課題を解決したのが、いつでもどこでも写真を撮るだけで、自分の健康状態を知ることができる「カロミル」というアプリです。 カロミルにおいて最も特徴的なのは、AIによる画像解析能力の高さです。 この強みを生かすことにより、・食事の写真を撮るだけで、栄養素を割り出してアプリに自動記録する・体重や血糖値、血圧等の測定結果を撮るだけでアプリに自動記録するといったことが可能になります。   感覚でなく、実数値で自分の健康状態を把握できるので、食事バランスの分析、改善にも役立てることができます。 画像解析の能力が上がるとその分だけ、可能性は広がります。このようなAIにおけるDXの活用事例は、今後も大きなトレンドと予想されます。 ペーパーレス化を実現するDX「CloudCerts」 新型コロナウィルスの影響により在宅ワーク、オンラインでの商取引が増える一方、従来通り紙の書類や証明書、押印作業を行っている企業はオフィスも数多く存在します。 このままでは外出リスクは勿論、時間やコストの浪費という点においても企業の不利益は高じていくばかりです。 そういった従来の紙の証明書やハンコの代替手段として利用できるのが「LasTrust」が提供するブロックチェーン証明SaaS「CloudCerts」です。 CloudCertsは、紙の証明書の原本を簡単にデジタル化できるサービスです。利用することで、省コスト化を実現できるだけでなく、大切なデータをブロックチェーン上に安全かつ容易に管理することができます。 情報の秘匿性 証明書内容を暗号化して、内容が読み取れない形でブロックチェーンに記録するため、そこから情報の漏洩を心配する必要はありません。 耐改ざん性 また、ブロックチェーンは「一度書き込んだら変更できない」という特性があるため、CloudCertsから発行された電子書類は偽造ができません。 発注から発行、納品までの全工程を非接触で実現 さらに、CloudCertsには、ブロックチェーン証明書の発行を「非接触」で行える利点もあり、アフターコロナの時代において非常に重要な役割を果たすことができます。 実際に、ビジネス・ブレイクスルー社とのプロジェクトでは、受注から発行、証明書授与までの全工程をオンライン上で行うことができました。 このように、紙の証明書やハンコにおける「証明」の役割はデジタルへと置き変わっていくと予想されます。その中でも、CloudCertsは画期的なDXであり、ペーパーレス化を検討している事業者にとって有益です。 まとめ コロナ禍によって、望むと望まざるとに関わらず、人類社会は大きなパラダイムシフトを迎えており、ビジネスにおいてもニューノーマルの世界に適応するための”変化”を求められています。 当社も、この激動の時代を生き抜こうと努力する企業へバリューを提供できるよう、今後も励んで参ります。